冷たい雨(平成22年2月1日)

ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。

朝から冷たい雨が降っています。
・・・といってももし今朝7時に孟子に来れていたら、2時
間活動できたでしょう。
今朝の雨は、9時からが「降り始め」でした。

毎朝わんぱく公園に6時に出発しているので、休園日は
ついつい寝坊してしまいます。
今朝も起きたら7時を回っていて、孟子到着が9時にな
ってしまいました。

もっとしっかりせんといけません。。

冷たい雨がふりしきるなか、カッパを身にまとい、孟子不
動谷を歩きます。

今日は目的があります。
先週から産卵開始したニホンアカガエルの卵塊の個体
数調査を開始しようとしています。
来週月曜日は所用で和歌山大学に行かねばならず、
データが取れないので、今日しっかりとデータをとってお
かないと、2004年以来8年目になるこの調査データの
継続ができないので無理やり雨の中の調査になりました。

今年度は未来遺産登録もあり、里山の構成要素であり、
孟子の活動のある意味「中心」である稲作水系のポテン
シャルの高さを指標する貴重両生類の8年の継続調査
を、未来遺産指定年に途絶えあさせることはできないの
で、調査にも力が入ります。

シンジュの樹にシメの小群が来ています。
笹舟のような翼をもった特徴的な種子をつけるこの植物
の種子を、もっとも頻繁に食べにくるのはこの小鳥です。
堅い種子を「万力」のような太い嘴でパチンパチンと割っ
て食べてしまいます。
標識調査員の人に聞くと、捕獲して最も扱いにくい小鳥
が、かぎ型の嘴をもつモズとこのシメだそうです。
この小鳥の噛む力は本当に強く、かまれると不等号型
の傷が指につき、血が吹き出るそうです。
堅いヤマザクラの種子を割って、中の「仏様」を食べる
ほどの嘴なのですから、人間の「柔肌」を噛み破るのな
ど造作もないことなのでしょう。

入口の水田にはニホンアカガエルの産卵はありません。
このあたりの水田は今も地元の農家の方々が稲作をし
ておられるので、溝もしっかり掘られ、水のしっかり溜ま
っているので、来週には産卵されることでしょう。

しかしそこから奥に進むにつれて、放置水田が目立ち、
どんどんカエルが産卵できるハビタットが見当たらなくな
ります。
あえて探すとすれば、イノシシのぬた場で、今年もその
うち産卵が確認せきるでしょうが、こういう場所に産卵
してもかれらが順調に育って上陸する5月中旬まで、
そこに水が溜まっている「担保性」が皆無なので「無駄
な産卵」になる可能性が大きいのです。

そういう意味でも、減農薬もしくは無農薬で営まれた、
水田まわりの溝の安定した滞水は、本来の彼らの産卵
ハビタットとして、必要不可欠なものと言えるでしょう。

今日の調査で丸嶋水田では卵塊が1個しか確認できま
せんでしたが、孟子不動谷におけるニホンアカガエルの
「本来の産卵ハビタットの保全」は、丸嶋水田周辺の農
閑期の水環境の保全が唯一絶対の課題といえそうです。
丸嶋水田の後継者発掘と合わせて、「未来遺産」指定を
機に、今後の大きなテーマの一つといえそうです。

孟子不動谷のニホンアカガエル個体群にとって、もっとも
安定した、担保性高い産卵ハビタットの提供をしているの
はとんぼ池です。

平成21年度、国土緑化推進機構の間伐材活用の助成
をいただいて、きみひろ池の半分を補強・リニューアルし
た最大の目的の一つが、孟子不動谷の稲作水系のポテ
ンシャルの高さを指標する生物の一つである、和歌山県
レッドデータブック絶滅危惧Ⅱ類。ニホンアカガエルの繁
殖ハビタットとしての担保性高き水環境の整備でした。

トンボ類のようにハネを持ち、長距離の移動が可能な生
物と違って、両生類のような「はいずる」だけが移動手段
の生物の保全は、谷谷でDHA組成が相違すると言われ、
今年10月、調印されるCOP10の「旗印」である「生物多
様性」の花形ともいうべき生物です。

今回の国土緑化推進機構の間伐材活用の事業で、孟子
不動谷の貴重なニホンアカガエルのDNA保全の担保性
確保の「足がかり」ができたことは、非常に有意義なことと
言えそうです。

結局今日は、きみひろ池28個、織田池7個、黒江池5個
の計40個の卵塊をとんぼ池で確認しました。

2004年 0
2005年 0
2006年 1
2007年 0
2008年 0
2009年 59
2010年 41
ニホンアカガエルの調査を本格的に開始して以来7年間
のニホンアカガエルの2月1日現在の産卵数です。
2009年から一気に増加しているのが一つ気になります。
ニホンアカガエルやヤマアカガエル、カスミサンショウウオ
等の早春に産卵する両生類はここ数回の孟子便りでも書
いているように、低温に順応した氷河期の生き残りと言わ
れる種です。

そういう生物の産卵開始日が早まるというのはやはり「冬
が暖かい」ということを表していると言えなくもありません。
昨今叫ばれる「温暖化」と早計に関連付けることは危険で
すが、要注目の事象であることは確かです。

それともう一つ、今年は注目していることがあります。

昨年11月に孟子を襲った時間雨量100mm超の集中豪
雨のことです。
孟子便りでも紹介したようにこの集中豪雨は谷水の流域
が変貌するほどの「爪痕」を孟子不動谷に残しました。
こういう豪雨が「はいずる」ことのみが移動手段の両生類
にとって、壊滅的な被害を与える可能性を孕んでいます。

広島に住むありもとの知り合いがフィールドにしている谷
で、時間雨量100mm超の豪雨により谷に繁殖するヒダ
サンショウウオが壊滅した経験を持つ方がおられ、孟子
便りを読んですぐにお見舞いのメールをいただいていた
のですが、ニホンアカガエルは、何とか「大丈夫」だったよ
うです。

調査を終えても雨はやむどころかどんどん激しさを増して
いきます。
「天の邪鬼の子ども」の民話で有名なキジバトだけは、雨
が大好きで元気に囀っていますが、その他の鳥はひっそり
しています。

雑木林の中から、エナガの声や、ルリビタキの声が、小さく
聞こえるだけで、姿を現すことはありません。

それでも炭窯南谷のタマミズキの大木がつける朱色の果実
が、ほとんどなくなっているところをみると、ヒヨドリやツグミ
たちは、「それなりに」晴天の日は活動しているようです。

今朝の天気予報によると、東日本にこの雨雲が流れるころ
には、向こうは雪に変わるそうです。

せっかく生まれた41個の卵塊が、「寒の戻り」の凍結で「無
駄」にならないことを祈りつつ、冷たい雨の孟子を後にしまし
た。
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<鳥類>
キジバト、コゲラ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ルリビタキ
トラツグミ、シロハラ、ツグミ、ウグイス、エナガ、ヤマガラ
シジュウカラ、ホオジロ、アオジ、カワラヒワ、イカル、スズメ
ハシブトガラス、ハシボソガラス、シメ、メジロ、トビ
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<ニホンアカガエル卵塊>
黒江池 5個
織田池 7個
きみひろ池 28個
丸嶋水田 1個
計 41個
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