バンコクの友人より〜在りし日の思い出①

私が勤めていた日本語学校はバンコクでも日本人の多い地域である、スクンビット通りの近くにありました。勤め先の付近はにぎやかな繁華街なのですが、そこで日長一日ぶらぶらしている、とても日本語の上手なお姉さんがいました。

最初は全く何をしているのか分かりませんでした。そのうちに少し、親しくなって話をするようになりました。彼女は結婚の斡旋業をしているとのことでした。

つまり、独身日本人男性に、若いタイ人女性を紹介してさらに国際結婚の法的手続きなども代行をする商売をしていたのです。だから日本語もとても上手で、お客さんを探す為に日本人の多い通りでブラブラしていたわけです。

お客さんもぼちぼちいるようで、20歳、30歳差のタイ語の分からない日本人男性と日本語の分からないタイ人女性のカップルを何組か成立させていました。結婚生活はびっくりするほどうまくいってなかったようですが…。

彼女自身も日本人のボーイフレンドがいて、こちらは傍目にもいい感じのカップルでした。
ある日のお昼休みに、彼女が豆腐の味噌汁とおにぎりを持って私の勤め先の日本語学校にやって来ました。
「来週、彼氏のお母さんに会う。」
「そうなん。よかったね。」
「私、日本の料理できたほうがいいでしょう。だから、作った。これ食べて、おかしいところあったら、言ってください。」
「わー、ありがとう。上手に作ったね。」

早速、お昼に同僚の日本語教師といただきました。

まずはお味噌汁から。

ごくり…。パクパク。

「こ、こ、この味噌汁は…。」
「出汁の味がしないね。」
「お湯に直接、味噌ぶち込んだな。」

「こ、こ、この豆腐は…。」
「卵豆腐だ。」
「うん。出汁がきいてるね。」

続いて、おにぎり。

「こ、こ、このおにぎりは…。」
「味がしない…。」
「せめて、塩味ぐらい、つけて欲しかった。」

後日、彼女に間違いを指摘して伝えようとしたのですが、今ひとつ伝わらない。しょうがないので、笑顔で「美味しかったよ。」って言っておきました。

【写真と本文は関係ありません】