深江の菅について 大阪市立自然史博物館 訪問

7月12日(土)(%晴れ%)

深江の菅を生物学的見地から考察。
山路歴史・文化部会長、大東菅田保存会会長とともに大阪市立自然史博物館の学芸員の先生方とお話してきました。

そもそもは、山形や鳥取の菅は穂を出すのですが、深江の菅は穂をつけず、花を咲かせません。これは何故か。深江の菅は特有の種なのか?という仮説で訪問。

そして議論しながらご教示頂きました。
深江では7月下旬に刈り取ります。つまり花を咲かせて種子を作る前に刈り取ることで種子で増やさず、株分けして分けつさせることによって育てます。これは子孫を残す栄養を葉の成長に回して菅笠製作に適した幅広く長い菅にしているわけで、いわゆるクローン栽培のようなものです。

種子から子孫を増やすと、菅の個体に個性が出てしまいます。これに対して株分けで育てるとコピーされるように菅の質が安定します。昔の人はご存知でした。

かつてお伊勢参りが大流行して多くの旅人が深江の菅笠を買い求めました。
この菅笠の需要により安定した品質で一定規格による大量生産の必要性ができてこの栽培法になったのだろうとのことです。
農作業や雪国で使用する菅笠は実用性が一番のニーズであったのに対し、深江の菅笠は町使いであり、ファッション性が大きなファクターであったと推察されるとのことでした。

これから実験としていくつかの菅を刈り取らずに1、2年放置して穂を出して花をさかせるか検証しましょう、ということになりました。

先生も地域の生物資源を利用した産業の事例に興味を持たれており、京都の取り組みを例に出され、自然保護についても地域の特色を出すべきで、「文化をささえているのは自然であるという論理に基づき、文化継承による自然保護というところに大阪も立ち返るべきではないか。」と熱く語られました。

深江の歴史・文化における取組みの方向性に示唆を与える貴重なお話でした。

穂をつけ花を咲かせている同博物館の菅の標本。⇒

(%エンピツ%)ゆば