夏の造形クラス

《高学年クラス》
 大きな銀河の渦から始まった4月の造形は、海での生命の誕生、柔らかい海藻からすっくと立ち上がり、巨大化していく針葉樹の世界へと向かい、それとともに生きた恐竜たちの話をしました。その後、針葉樹の世界から被子植物、つまり色とりどりの花をつけ、果実を実らせる広葉樹の世界へと移り変わる様を、鳥類、哺乳類の進化の話を交えて進めてまいりました。この世界の壮大な流れは、言葉を発しない自然界が私たち人間に語りかける未来への素晴らしいメッセージであり、それをぜひとも子供たちに伝えたいという思いがあり、このテーマをとりあげています。
 9月の造形では、その流れの中で動物たちに起きた革命、卵を温め、子供を育て始める動物たちについてお話ししました。母親のぬくもりが卵を包み、不思議な渦の流れとともに形成されていく新たな生命をにじみ絵で描いてみました。見たこともないそんな世界を描くのは、子供たちにはすこし難しかったと思いますが、こんなかんじかなあ、と思いながら制作していました。この小さなミクロの世界の生命の渦が、4月に制作したあの壮大な銀河の渦とともに、子供たちの中で共鳴してくれればと願っています。

《低学年クラス》
 5月、6月はグリム童話から『いばら姫』『つぐみひげの王様』のお話をし、それをもとににじみ絵を行いました。9月は『聖フランシス』です。
 立派なお屋敷に住むお金持ちの両親のもとに生まれた彼は、大きくなると家を出て旅に出ます。そこは今まで自分が見てきた世界とは異なり、ものや食べ物、家を持たない人たちに出会うこととなります。フランシスは持っていたものを分け与えていくうち、ついに何もなくなってしまいます。夕日が沈もうとする頃、広い草原にやってきた彼は、寂しさと不安に襲われます。でも、木の枝や草陰で楽しそうに歌っている鳥たちに気づくと、草原の中へとはいって行き、「今日は」とあいさつしたとき、鳥たちの歌声が一斉に止んだかと思うと、バタバタ、とフランシス目掛けて飛んできて、彼を取り囲んでしまいます。そして次に何を話してくれるのかと、鳥たちは長い首を振りながら待っています・・・。何と、フランシスは鳥たちとお話ができるようになっていたのです。
 制作では、お話に表れてくる心の様を、色の体験として子供たちに伝えることを大切にしています。『暖かい夕陽に染まった空が、暗い夜の静けさで覆われていきます。それとともにフランシスの心は、何もなくなってしまってこれからどうすればいいんだろう、何もない草原でどうして夜を過ごせばいいんだろう、という不安と寂しさに包まれていきます。でもそこに甲高く楽しそうに歌う、黄色いオーラをまとった鳥たちが、彼の冷えた心を温め、彼は元気になっていきます。』

細井 信宏