最近、過去の原発事故、それも「臨界」に達しようかという重大事故の隠蔽が明らかになっている。原発事故の隠蔽はとんでもないことだが、建築物や都市施設などの事故についても、事故情報の公開の仕組みは十分ではない。
建築物に限ってみると、国土交通省社会資本整備審議会の建築分科会に建築物等事故・災害対策部会が設置され、その調査結果が明らかにされている。事故例の調査は次の6つの事例に分類されている。
1 建築物
2 エレベーター
3 エスカレーター
4 簡易リフト
5 小荷物専用昇降機
6 遊戯施設
この建築物等事故・災害対策部会は2005年7月に設置されたものであるので、姉歯元建築士による耐震偽装や港区におけるシンドラー製エレベーター事故の前の設置ということになるが、上記の事故事例の最新版は2006年9月現在のものである。詳しくは、下記のホームページの第6回部会資料に掲載されている。
http://www.mlit.go.jp/singikai/infra/architecture/accident/accident_.html

また重大事故が起こると、過去に遡って調査がされる。私(伊藤)が国土交通省のホームページからえた情報は下記のものがある。
(1) 既存建築物における窓ガラスの地震対策と調査報告
(2) 既存建築物における外壁材の地震対策と調査報告
(3) 大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策と調査結果
(4) 村松小学校(新潟県五泉市)の防火シャッター事故と安全対策
(5) 自動回転ドアの運行状況調査
(6) 民間建築物における吹付けアスベストの調査結果

これらの事故等における教訓は、「事故情報の収集・公表と共有化」である。国土交通省住宅局の委託調査として「建築物等に係る事故情報の収集・公表方法検討委員会」が設置され(事務局・(財)日本建築防災協会)、今年の3月末までの試験運転として「建築物事故情報ホットライン」が運用されている。この試験運転の検証と活用が課題である。
また東京都には「建築物等に係る事故の報告制度」がある。しかし残念ながら、既存建築物等の事故は『死亡事故』と『全治30日以上の重傷事故』であるため、まだ事故報告の事例がないという。であるなら、たとえば『全治1週間以上』に対象を下げるなどの工夫が必要である。
重大事故が発生してから全国調査を行い、対策を検討するという、これまでのような対症療法では事故は防げない。これは全国民共通の認識である。小さな事故でも事故報告を集約し、それを公表することによって課題を共有する。そのことが早急に求められている。