昨日の昼は、ちょっと所用があって日本橋へ。
おなかが減ったので、この界隈で昼にしようと思って店を探す。

こういう場合、私は極力、チェーン店を避ける。
どこにでもあるようなお店ではなく、その街にしかない店に入るようにしている。
あれこれ迷いながら中央通と昭和通にはさまれた路地を歩いていると、「天丼」の看板を発見。
ちょっと奥まった路地に赤提灯が出ている天ぷらやが見えるので、「よし、ここに決定!」と、その店の前に。

こういう店は、絶対にうまいに違いないんだ〜、と思いながら扉を開けようとしたときに、「え?」。
手をかけた扉がちょっと油っぽくて、ぬるぬるするのだ。
まあいいや、天ぷらやだからと思って、扉を開けると、店の中には誰もいない、狭い店のカウンターに座っていた親父さんが、「いらっしゃい」というよりも早く、強烈な油のにおいが「ツーン」と鼻を襲う。

まあ、天ぷらやだから油のにおいは仕方ないと思いながらも、何か、妙な感じがする。
古い工場なんかでにおってくる、使い古した油のようなにおいなのだ。
これはやばい、と思ったが、もう座ってしまったので逃げられない。
においは別として、味は食べて見なけりゃわからないと、天丼を注文するが、その間も、どうもその油のにおいに鼻を刺激されて、どんどん気分が悪くなる。

そこに、「どうも〜」と、常連と思しきおばちゃんが店に入ってくる。
天ぷらを揚げている店主と親しそうにしゃべっていたが、「じゃあ、今日は、お刺身定食ちょうだい」。
ほ〜、天ぷら矢の常連なのに、お刺身定食なんだ。どうなっているんだ、と思っているうちに天丼がくる。
普通、揚げたての天丼といえば、天つゆにしたしているといっても、基本的に天ぷらはさくさくだ。
ところが、この天ぷら、いつ揚げたの? というような見事な湿り具合。

食べてみると、天ぷらというよりも、天つゆがどうも油くさくて、気持ちが悪い。
食べるほどに、体が拒否反応を起こして、結局半分以上残して、逃げるように払いを済ませて、この店を出てきた。

もうしばらく、天ぷらは食べたくない気持ち。
というよりも、日本橋の裏に、こういう店が生き残っているという現実を考えて、逆の意味で、すごいな〜と思った。
実は、この天ぷら屋に行く前に、日本橋ならここに行こうと決めた蕎麦屋があったのだ。
何年か前にできたところで、店の作りも、そばの味もかなりいいものがある。
何度かいってすっかり気に入った店だったのだが、それがなんと、閉店になっていたのだ。
あんな店がなくなって、こんな店は残っている。
それが、不思議でならない。