ヨルダンに生きる女性たち

ヨルダンでは、商店で、タクシーで、必ずといってよい程「フィリピーノか」とたずねられます。オフィスに来る販売員も皆、私をフィリピン人のメイドと確信し、「マダムを呼んで来て」といいます。先日は、片言の英語で「お父さんかお母さんに会いたいのだけど」と言われました。成人式がすでに遠い記憶となる私を、子ども扱いするのを不思議に思って現地スタッフにたずねたところ、それは「ご主人さまか奥さまを」という意味だったのです。

 ヨルダンには、フィリピンをはじめ、インドネシア、スリランカから多くの女性がメイドとして出稼ぎに来ています。あるスリランカ出身の女性は、中学を卒業して工場で数年働いた後、ヨルダンに働きに来ました。当初は、家事もアラビア語もまったくできませんでしたが、間もなくどちらも問題なくこなせるようになり、10年を経た今はさらに、流暢な英語も話せるようになっています。

 英語で話していてわからない単語があると熱心に質問をしてきますが、帰宅してから辞書を引いて覚える努力を続けているとのことです。故郷の家族への仕送りを欠かさず、ヨルダンに根を下ろして暮らしている彼女たちを、心の強い女性だと感心して見ています。