「統合保育戦略」その3

(%王冠%)3月下旬に帰国が決まり、バタバタしてますイラストライター大枝桂子です。(^_^;)(%王冠%)

前回、「統合保育における汎用的指導戦略」Generic Instructional Strategiesについて、2月中にアップすると書いておいて、
もう3月になってるじゃないですか!
なんでかな〜(%涙%)。

とにかく、気を取り直し、4>課題分析(課題の細分化)について書きますね。

(%赤点%)4>課題分析(課題の細分化)(%赤点%)
課題分析(Task analysis)というのは、
平たく言うと、「やるべき行動がどんな流れ(Sequence)で構成されているか」を見てみましょう、といいうことです。

たとえば、一人で手を洗えない子に「自分で洗えるようになる」ことが
目標としてセットされた場合、
いきなり「はい、やってごらーん」という一言ではうまくいかないですよね。
どんな場合でも、まず大人がモデルを示すことになると思いますが、
それでも、ただ見ただけでは覚えきれないことがある。

というのは、ふだん私たちが何気なくやっている「手を洗う行動」も、
実は一連の行動の流れから成り立っていて、
知的にちょっと遅れがあるお子さんの場合、
全部一気に覚えきれないかもしれないんですね。

実際、「手を洗う行動」を細分化してみるとこんな感じです。

ステップ1(%青点%)シンクの前に立つ
ステップ2(%青点%)袖をめくる
ステップ3(%青点%)蛇口をひねる
ステップ4(%青点%)水の温度を触って確かめ、可能なら温度を調整する
ステップ5(%青点%)手に石けんをつける
ステップ6(%青点%)手をこすり合わせて洗う
(手洗いの歌や、数を数える、砂時計を使うなどで、
必要十分な手洗いの時間をキープする)
ステップ7(%青点%)手を洗い流す
ステップ8(%青点%)蛇口を止める
ステップ9(%青点%)手を拭く

こうやって書くと、けっこう大変なんだ〜って思いませんか?

どんな行動(課題)でもだいたいはこんなふうに、
一つ一つの動作が鎖状につながって成り立ってるんです。
このうち、どのステップを飛ばしてしまっても、
ちゃんと手が洗えたことにならないんですから、
それができるようになるって、相当えらいことですよ。

一つの行動をマスターするための「課題分析の方略」としては、

1、その子に身につけて欲しい行動を目標として設定する
 (手を洗う、食後のお片付けをする、など)
2、上のようにその行動をステップに細分化して書き出す
3、まず、ステップ1がひとりでできるように、サポートし、
それがひとりでできるようになったら、
次はステップ2…というように、
少しずつ一人でできるステップを増やしていく。

さらにもう一つ、
これは面白いな、と思ったのですが、
バックワードチェーンニングBackward Chaining という方法もあります。
「逆ステップ法」と訳すといいかもしれません。
つまり、ステップの後ろから、
9>8>7>…と、逆にマスターしていってもらうという方法ですね。
手洗いの例でいいますと、
まず、ステップ8までは大人と一緒に行い、
最後の「手を拭く」ことだけは一人でできるように覚えてもらう。
それができるようになったら、
次はステップ7まで大人がサポートし、
ステップ8(%青点%)蛇口を止める
ステップ9(%青点%)手を拭く
この二つをお子さんにひとりでやるように促す。

こうすると、最後のステップを先にクリアするので、
達成感も味わいやすくてモチベーションもあがる、という利点があるのだと
思います。

ところで、
こういったサポートを大人がするとき(特に日本人は?(^_^;))
ついつい、手は出さないまでも口であれこれ言いたくなりますよね。
まだ慣れないウチは、口頭で次の行動を示唆することが
必要かも知れませんが、
前にお話しした「足場理論」Scaffoldingに乗っ取って、
言葉の指示も少しずつ減らしていく必要があります。
そうでないと、指示されないとできなくなってしまうので。

余談ですが、
こちらでは、「自立」というのがすべての子どもの最終目標として
きっちりセットされています。
日本の保育者さんは、「子どもと一緒にあそぶ」というモードで
保育されるシーンがけっこうあるようですが、
こちらではそういうのはあんまり歓迎されていません。
子どもがコツをつかんだな、と思ったら、
「その子を見ない」「その場を離れる」ことが推奨されているんですよ。
おもしろいですね。

ではでは、本日はこの辺で!