DNA検査で運命は決まらない

DNA検査で運命は決まらない2014年9月1日
私達の健康を左右する「マイクロバイオーム」という新しい発見

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 DNAってご存知ですよね。

犯罪捜査や人物特定のため、親子確認のため、そして病気の可能性の有無の確認のため、近年、使用されるようになった遺伝子検査の根幹をなすものです。

 DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)、の4つの塩基の組み合わせ(塩基配列)で成り立っています。この配列は、ヒトでは99%以上同じと言われています。残りのたった1%弱の組み合わせや順番が異なることで、特定の病気や特定の体質、体の特徴として、私達ひとりひとりを個性づけていることになります。

 でも、その組み合わせだけで、病気や体質や体の特徴が決まるわけではありません。様々な環境条件がそろうことで初めて遺伝子の特徴が発現されるのです。太りやすいDNAを持っている人が、かならず太るわけでも、背が高くなるDNAを持っている人が、必ず背が高くなるわけでもありません。

癌のDNAを持っている人が、必ず癌になるわけでもありません。そのDNAをもっているだけで、そのDNAが必ず発現するわけではないのです。

乳がんになりやすい遺伝子を持っている人が必ず乳がんになるわけではないし、持っていない人が乳がんにならないわけでもない。

 遺伝子の発現方法はどのような要因から影響を受け、決まるのか、化学的、医学的、生物学的、栄養学的に研究する、エピジェネティクスという研究領域があります。

更に、エピジェネティクスと関係し、ニュートリジェネティクス(栄養遺伝子解析学)やニュートリゲノミクス(栄養ゲノム解析学)という、特に、食品栄養素と遺伝子の関係を研究する学問もあります。

 女子栄養大学栄養科学研究所は、高血圧・肥満に関連する遺伝子多型に異常を持つ人の血圧、体重、体脂肪率と食事や運動との関係を調査した結果、「食事と運動療法は、遺伝的な体質よりも影響が大きい」と報告しています。

 また、東北大学大学院農学研究科は、個々の栄養素ではなく、食品の組み合わせや調理法などの集合体としての食事が、どのように私達の遺伝子に影響を与えるのか研究し、食事が遺伝子の修復や代謝能力、癌の前兆とも言われる臓器炎症の悪化や改善に直接関係していることを報告しています。

 昨年、BRCA1とBRCA2遺伝子に異常が発見され、乳がん予防として乳腺の予備的切除を行った女優のアンジェリーナ・ジョリーさんですが、今年は更に、卵巣や子宮の摘出を行うという報道がなされました。

 変異した遺伝子を持っている人が、生涯で乳がんを発症する確率は45-84%、卵巣がんでは11-62%だと言われています。ご覧のとおり、この確率には大きなばらつきがあります。そして、最も大切なことは、100%ではないということです。 

また、乳がんや卵巣がんを発症した人の全てが、変異した遺伝子を持っているわけでもありません。乳がん患者の3人に2人は遺伝子異常をもっていないんですよ。

 遺伝子に異常があることが、100%の発症を約束するわけではないように、遺伝子に異常がないことも健康の約束ではありません。遺伝子に異常がない人も、生活習慣が健康的でなければ病気になります。
症の可能性を左右できるということです。

 アンジェリーナ・ジョリーさんは遺伝子検査に基づいた人生の選択をしたわけですが、ホリスティック・ヘルスコーチの立場から見ると、その行動は「人間は遺伝子の前に無力。今のライフスタイルや食事を変えるくらいなら、体の一部を切除する方がまし」という価値観にもとれます。そ

れは、食べ過ぎて太っても、痩せるために食事やライフスタイルを変えるくらいなら、ダイエット薬や脂肪吸引すればよいと言う、ファストなライフスタイルの行きつく先のように思えます。彼女の行為を勇気ある決断だと称賛する声も多いですが、果たして本当にそうなのでしょうか。

 さて、ここまでは、私達自身のDNAについてお話しましたが、近年、私達は自己のDNAだけで存在しているわけではないという研究が進んでいます。

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