大晦日(平成22年12月31日)

ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。

昨日までの生温かい空気が、一気に冷え冷えとした空気
に入れ替わり、上空を雪を孕んだしぐれ雲が覆っていま
す。

2日前に行方不明になっていた美浜町のナベヅルとカナ
ダヅルが、再び日高町に帰還したという報せを鳥仲間か
ら聞きました。

孟子不動谷、平成22年、52度目の訪問です。

大晦日です。

今年の不動谷は、未来遺産調査で賑やかでした。向陽
中学校理科クラブの面々が、水田調査に、野鳥調査に
走り回りました。
そんな賑やかだった孟子不動谷も、平成22年最終日を
迎え、時折粉雪の降る冷たい気候の中、とても静かです。

いつもの鉄塔にオオタカが止まっています。
わんぱく公園のカワウも産卵しているので、彼女にとって
も、この寒い冬空でもすでに「春」なのでしょう。

「来年からちょっと作物を作りはじめようと思うてんのや」
そういって笑った森さんの畑に、セグロセキレイとハクセ
キレイが下りています。いと
ハクセキレイは孟子では渡りの途中に通過するだけの
旅鳥なのですが、今冬はこの時期に確認できました。
頭が黒色なので♂個体ですが、初列風切に幼羽が残っ
ているので、今年生まれの個体に間違いないようです。

そのまま水路道を歩きます。

そここからシロハラが「ピシピシッ!」と叫びながら暗い森
の中に飛び込みます。
ルリビタキの声も聞こえますが、森の奥深くで、出てくる気
配はありません。

ひときわ高いハゼの樹に、10羽余りのイカルの群れが来
ています。
キキコーキコー
澄んだ声で鳴き交わしながら、ハゼの果実を咥えています。
ハゼの果実を咥えたイカルは、その不格好なまでに大きな
黄色い嘴に生えた「缶切り」のような刃で果肉をそぎ落とし、
種子をバリバリッと万力のようにつぶして食べてしまいます。

ハゼノキにとって、種子をつぶして食べてしまうイカルはたぶ
ん「招かざる客」なのでしょうが、自然の摂理は鷹揚に彼らの
「食」を受け入れます。

イカルと競い合うように飛来するツグミたちは、果実を丸のみ
にし、果肉を消化して種子は糞と一緒に排泄するハゼノキに
とっては大変ありがたい「種まき鳥」なのです。
いっぱいに果実をつけたハゼノキの樹は、ありがたいツグミも
、ありがたくないイカルも、同様に、鷹揚に、受け入れます。

故・後藤伸先生が自著「明日なき森」の中にこんなことを記し
ています。
「どんぐりは森の動物の大切な食糧です。どんどん食べられ
たら良いんです。たとえばそれがカシの樹なら、そのカシの
樹が枯死するまでに、1本のカシの樹が生産できたら、それ
で成功なんです」

ハゼノキも、カシと同じ心境なのでしょう。
「儂が枯れて倒れるまでに、ハゼノキが1本育てば本望。イカ
ルさんや、どんどん食べなされ」
里山のエコシステムは、ことほど左様に鷹揚にできているの
でしょう。

ハゼの実を美味しそうに食べるイカルを見送ってしばらく歩く
と、また懐かしい声に足が止まります。
「ヒィフゥー ヒィー」
ウソの声です。
声のする方をじっくり探すと、コナラの枝先にぽったりと止まる
♀のウソの姿があります。
今冬、孟子でウソの姿を観察したのは、初めてのことです。
今日の一気の冷え込みに、山が風雪に凍り、それに呼応して
孟子まで下りて来たのです。
その後も上空を、小規模な群れは「ヒィフゥ」と鳴き交わしなが
ら通過するのを、何度も確認できました。

天堤池の上空を、アオサギの成鳥が翔けています。
「グララ グララ」
濁った声で鳴きながら、時雨雲の垂れこめる寒々とした空を
バックに、大きく旋回しています。

北風が強く谷を走り、鼠色の時雨雲から、雪片が落ちてきます。

今日は、本当に、寒いです。

そろそろ帰途につきます。
行きに水路道を通ったので、帰りは参道を歩きます。
行きにオオタカが止まっていた鉄塔に、今度はノスリが止まっ
ています。
今年孟子で越冬しているノスリは成鳥で、目が優しい黒褐色を
しています。

参道沿いのモモの樹に、お腹の白い小鳥が数羽止まっていま
す。
双眼鏡で確認すると、カシラダカです。
はるかカムチャツカ半島から冬鳥として渡来する小鳥で、孟子
のような田畑のそばに雑木林のある環境を好んで越冬します。
頭に黒い夏羽を残している♂も混じっています。
カシラダカは漢字で書くと「頭高」
頭にある冠羽を逆立てると、頭が高く見えるのでこの名があり
ます。

チッ チッ
小さな声で鳴き交わしながら枝に止まるどの個体も、冠羽を逆
立て、とんがり帽子をかぶったように見えます。

33種、ひととおりの冬鳥を確認できました。

みなさん
今年もいろいろな場面で一方ならぬお世話になり、本当にあり
がとうございました。
平成22年は、わんぱく公園長2年目ということで、ひたすら突
っ走ってまいりました。
また今年は、日本ユネスコ未来遺産プロジェクト1年目というこ
とで、向陽中学校の諸君と一緒に、どっぷり孟子に自然に浸か
り込み没頭する日が多かったように思います。

来年はわんぱく公園も3年目、未来遺産プロジェクトも最終年
となります。
おそらく来年も、今年以上に皆さまにお世話になる機会が増
えることと思います。

平成23年が、みまさまにとっても、ビオトープ孟子にとっても
、実り多き一年になることを祈念しつつ、平成22年最後の孟
子不動谷便りを、締めくくらせていただきます。

みなさん!! 良いお年を!!!
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<鳥類>
アオサギ、オオタカ、ノスリ、キジバト、アオバト、コゲラ、キセキ
レイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ビンズイ、ヒヨドリ、モズ
ルリビタキ、イソヒヨドリ、シロハラ、ツグミ、ウグイス、エナガ
ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カシラダカ、クロジ
アオジ、カワラヒワ、ウソ、シメ、イカル、スズメ、カケス
ハシボソガラス、ハシブトガラス
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