未来遺産宿泊調査(平成22年6月5日・6日)

ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。

6月5日11時。
わんぱく公園を後にしたありもとは、孟子不動谷に着きました。
これから明日の朝まで、日本ユネスコ未来遺産の宿泊調査が開
催されます。
田植真っ最中の丸嶋水田での田んぼの生き物調査、夜間のホ
タル調査、明けて早朝の鳥類センサスと盛りだくさんです。

川久保君や林君等、早々に到着した生徒はめいめいにフィール
ドに散ってそれぞれのテーマで調査をしています。
全員集合が14時なので、ありもともしばらく自分のデータ取りをし
ます。

まずオオルリの観察です。
ヒナはすっかり大きくなっています。
まだうぶ毛が頭にありますが、風切羽もかなり伸長し、もう数日で
巣から出る大きさになっています。

両親の咥えてくる昆虫も、どんどん大きくなっています。
マイマイガの大きな幼虫や、ヤマシロオニグモの成体など、観察者
にも種名が簡単にわかる大きさのものを次々と運んできます。
何回目かにはカワゲラの成虫を持ってきました。

オオルリ両親の献身的な餌運搬により、「三日見ぬ間の桜かな」
の諺どおりの驚異的な成長度合で大きくなった5羽のヒナは、来る
べく巣立ちの日を間近に迎えているようでした。

ありもとがオオルリを観察していると、入江さんに伴われて川久保君
がやってきました。
このブログを読んでくれている川久保君は、自分が見つけた巣が獣
に襲われたことを知っていて、ありもとが来る前に巣を観察にいき、
崖についたオオルリ♀の羽毛を持ってきていました。
このあたりの観察眼の鋭さが、彼の非凡なセンスといえるでしょう。

始めてみるオオルリのヒナに大感動した様子で、真剣に観察してい
ます。
餌を持ってきた両親が咥えている昆虫やクモにも興味を示し、携え
たデジカメで撮影しては、餌内容をモニターで確認しています。

こんな見やすい安全な場所にオオルリが営巣してくれたのも、今回
未来遺産の栄誉を賜り向陽中学との縁が深まったことも、本当に
孟子ビオトープにとっては得難いラッキーだと思います。

オオルリの観察をし、天堤池ルートの一通りの調査を終えたころ、
向陽中学の皆さんが到着します。
向陽中学理科クラブ総勢23名と、前川先生、それに前川先生
の息子さんも来られていました。
このうち13名が今日、孟子不動谷に宿泊する予定です。

開会のあいさつのあと、ありもとから2日間の調査の概略の説明を
行い、早速田んぼの生き物調査の開始です。
今日この調査を行うにあたりお手伝いをお願いした山鷲君を含む
「ユネスコ調査隊」は一路、丸嶋水田に向かいます。

水田の調査は4月から水をためている苗代床と、2日前に水を貯
めた水田の2ケ所で行います。
23名を2チームに分け、それぞれの水田を1時間掬ってもらいます。
これは4月の第一回調査の際に、とんぼ池を調査した手法・時間
と全く同じにしてあります。

水田関係のベントス調査は今年7月にあと1回予定していますが、
どれも同じ手法、同じ時間で行い個体数種数を記録することで、
取得データの精度を合わせるつもりです。

真夏の暑さの中の献身的な彼らの調査の結果

(4月より水を貯めた苗代床)
トノサマガエル 成体18 幼生308
ヌマガエル 成体 1 幼生 5
ツチガエル 成体 0 幼生 1
ニホンアカガエル 成体 1
ニホンアマガエル 成体 0 幼生 21
シュレーゲルアオガエル 成体 1 幼生122
ドジョウ 3
サワガニ 1
アメリカザリガニ 1
カワニナ 2
キクヅキコモリグモ 4
スジアカコモリグモ 1
アシナガグモ 1
オオアオイトトンボ 2
アキアカネ 2
ヒメアメンボ 4
マツモムシ 6
ハイイロゲンゴロウ 1
ヒメガムシ 2
キイロヒラタガムシ 1

(2日前に水を貯めた水田)
トノサマガエル 成体16 幼生 1
ヌマガエル 成体 3 幼生 33
シュレーゲルアオガエル 成体 1 幼生 1
サワガニ 1
カワニナ 3
モノアラガイ 1
ミミズの一種 1
キクヅキコモリグモ 1
コセアカアメンボ 1
マツモムシ 5
ヒメガムシ 4

トノサマガエルとシュレーゲルアオガエルの個体数が多いのは、
4月から苗代床を創生して苗代を作るために水を貯めるお
かげで、上記2種のカエルの前半の産卵ピークに産卵ハビタ
ットをうまく提供できている証拠として喜ばしいことのように思
います。

また、オオアオイトトンボ、アキアカネ等、普通種とはいえ谷
戸の棚田に生息すべきトンボの幼虫が確認でき、また時期
が良かったことでオオアオイトトンボの羽化を確認できたことも
今回の調査の収穫といえるでしょう。

このあと7月に再度調査を行うことで、ヌマガエル、アマガエル
ツチガエルという6月産卵のカエルたちの実際の生息密度も
計測することができ、そのことで無農薬で行う圃場周辺生物
にとって最も良好な圃場環境におけるベントス類のデータの集
約ができることを期待したいところです。

ベントスのデータをまとめ終えた時間が18時
その後、山鷲君も交えて夕方に活動するゼフィルスの調査をし
ましたが折からの低温に災いしてか確認できず、早めの夕食を
とったあと20時より、ホタルの生息調査を行います。

孟子で記録のある夜光るホタル3種(ゲンジボタル・ヘイケボタル
ヒメボタル)を、参道を歩きながら光の数をカウントし記録します。

ゲンジボタルは大きな光でヒーカヒーカのゆっくり光る。
ヘイケボタルは小さな光でミュッミュッと光る。
ヒメボタルは赤っぽい大きな光でカメラのフラッシュのように光る。

上記の識別点に従って種に分けてカウントし、記録します。

ゲンジボタル 103
ヘイケボタル 36
ヒメボタル 109
マドボタル幼虫 1
ホタル類も低温の影響か例年より個体数は少ないものの、先週
よりはかなり個体数が増加し、良いデータがとれました。

調査中、夜行性でなかなかその姿を確認できない個体数の少
ないヘビ・シロマダラを観察することができ、本当に収穫多き夜間
調査となりました。

カウント調査のあと、山案山子テラスで本日の調査データのまとめ
と採集してきたホタルによるありもとからのホタル3種の識別法の説
明とレポート作成用の写真撮影、そしてホタル3種のプロフィール
の説明を行い22時、全員就寝です。

明けて6月6日4時
彼らがセットした目覚まし時計の音でありもとも目覚めました。
さすがに疲れて寝入ってしまっていたようです。

未明からホトトギスの声が賑やかです。
1人、また1人・・・
寝袋から出た生徒たちが「おはようございます!」という元気な声と
ともにロフハウスから出てきます。
4:15夜明け
最も早起きのキビタキに続いて、ヒヨドリとメジロが大合唱を始めます。
オオルリ、キビタキ、サンコウチョウ、サンショウクイ・・・
山地森林性の小鳥の宝庫の孟子不動谷もやはり「里山」と思わせる
のがこのメジロとヒヨドリの朝の大合唱です。
和歌山の平地丘陵地の潜在植生は照葉樹林・・・
その潜在植生を最も好む留鳥であるメジロとヒヨドリがやはり最も個体
数が多いのです。

5時からいよいよ鳥類のセンサスの開始です。
山案山子から鶴者峠&山案山子から入口のルートを歩き、出現す
る鳥類を記録します。
そして、キビタキ、オオルリ、コサメビタキ、サンショウクイ等の和歌山県
レッドデータブックに記載のある種は確認地点を地図に落としていき
ます。

天堤池のほとりのネムノキでセンダイムシクイの一家に出会います。
巣立ち雛を3羽連れています。
昨日帰りがけ、入江さんが見たと教えてくれたのはおそらくこの一家
でしょう。
ツィー ツィーと甘えた声で鳴きながら、親鳥に餌をねだっています。
ありもとは孟子でセンダイムシクイのヒナを見たのは今回が初めてで
す。これでセンダイムシクイも孟子の「正式繁殖鳥リスト」に入ります。

このルートセンサスでも珍しいヘビに出会います。
タカチホヘビ(なみへび科)
潜在個体数はシロマダラほど少なくないといわれていますが、ミミズを
主食とするため地中にいることが多く滅多に地上に姿をあらわすこと
のないヘビです。
体(背中)の真ん中に黒い線が1本走るのと、腹にウロコが肛門から
下も1列であることが特徴のヘビです。

今回は本当にヘビ類にツイています。
2日間でシロマダラとタカチホヘビに出会えることはそう滅多にあること
ではありません。

4月調査から3回の調査で、オオルリとキビタキのデータはかなり取れ
ました。
ここまでのさえずり地点のデータを1枚の図面に落とせば、オオルリと
キビタキのテリトリ占有状況はほぼわかるでしょう。
オオルリに至っては、2巣を確認しているので、余計正確なテリトリ情
報が得られたといえるでしょう。

これで7月8月にキビタキの巣立ちヒナ調査を行うことで、来年の巣箱
架設に向けた良いデータの蓄積となるでしょう。

今回こわいくらいに良いデータがとれているのは、孟子の里山自然の豊
かさによるだけでなく向陽中学の生徒諸君の熱心さに大きく起因して
いるのは間違いないところです。

こんな熱心な生徒諸君との縁を深めるきっかけを与えてくれた日本ユネ
スコ協会連盟に、心より御礼申し上げたいと思います。

夥しい数のオタマジャクシにオオルリの営巣
 夜の闇に灯るホタル火に珍蛇・シロマダラ・・・・

町育ちの彼らにとっては途轍もなく「濃い」自然とのふれあいであったこ
とでしょう。

次回は7月
よりたくましくなった彼らと「再会」したいものです。
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<鳥類>
カイツブリ、ハチクマ、カワセミ、キジバト、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス
センダイムシクイ、キビタキ、オオルリ、サンコウチョウ、クロツグミ、コサ
メビタキ、サンショウクイ、エナガ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、カワ
ラヒワ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、コゲラ、アオゲラ、
キセキレイ、ホトトギス、カワセミ、コジュケイ
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<両生爬虫類>
シュレーゲルアオガエル、ニホンアマガエル、トノサマガエル、ヌマガエル
ツチガエル、ニホンアカガエル、ウシガエル
ニホントカゲ、ニホンカナヘビ、ヤマカガシ、シロマダラ、タカチホヘビ
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<トンボ類>
オオアオイトトンボ、ホソミオツネントンボ、モノサシトンボ、クロイトトン
ボ、ヤマサナエ、オオヤマトンボ、ギンヤンマ、クロスジギンヤンマ
ハラビロトンボ、ウスバキトンボ、アサヒナカワトンボ、コシアキトンボ
シオヤトンボ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボ
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