以下にサドベリー・バレーのジャーナルに掲載されていた卒業論文を紹介したいと思います。

これは、高校生になってからサドベリーに入学した(おそらく)女の子の卒論です。

おそらくサドベリーにいたのは三年ほどの短い期間でしょう。

しかし、この論文を読むと、サドベリーでの生活を通して、彼女(or彼)が自分で人生を選択するということを学んだことがよく分かります

最近神戸サドベリーでは、入学年齢の制限をなくし、4歳から19歳までであれば誰でも入学できるようになりました。多くの人がサドベリーで自分の人生を生きることを私たちは望んでいます。

訳はメンバー保護者兼スタッフのララさんと私です。

(ターボウ)
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ローレン・フォルツ 2009年5月18日

 高校生活は私にとって毎日が闘いで、いつもいろいろなところで摩擦ばかり起こしていた。周りのみんなは一様に大学進学へ向かってせわしなく準備を進めていた。私の心の奥でも常に「将来」という言葉は止むことなく響いていて、「将来何になりたいの?」「いい大学に入らなかったら、人生は終わりね。」絶え間なく振りかかるそんな言葉に私は精神的に参ってしまって、ついには先のことで楽しみにできたことと言えば夕食で何を食べるかというぐらいだった。前に進むには心の整理も準備もできてなくて、一歩足を踏み出すことも怖くてできなかった。子どものような感情で私は「正しい」こととは全く反対のことをした。一日に6時間も教室に座っていることが耐えられなくなった。先生たちはまるで見下ろすように振る舞い、威張った感じで話しているように思えた。つねに学ぶように強制されていることに私はイライラした。勉強に集中することは高校ではほとんど無理だった。私は自分が誰かも分からなくなってしまった。
 
 
 卒業するためには普通とは違った解決策が自分には必要だと分かって、その解決策を探し始めた。そこで見つけたのがサドベリー・バレー学校。この学校は子どもたちのためのユートピアのように見えるけれど、最初の数ヶ月は私はおびえていた。公立の学校のシステムが私の中に深く根付いていて、この学校が提供している自由にどう向き合えばいいか分からなかったからだ。とりあえず私が選んだことは、今までの学校でしていたこと—大嫌いだったのにもかかわらず—と全く同じ、授業を受けるということだった。けれど結果的に今までの学校と同じ−そこで見つけたのは「授業でうまくやれない自分」だった。
 

 そんな日々を送っている頃、ダニーが私に近づいてきて、「ローレン、君はここで何がしたいの?」と聞いてきた。私は驚いた。そんなことを聞いてきた先生は今までいなかったから。「分からない」と答えた。「たとえば・・もし読書が好きなら・・・ただ読んだらいいよ。」そして次の年の間中、私は読書に没頭した。あらゆる種類の本を読んだ。ジョージョ・オーウェルのような古典的な作家からアリス・ホフマンのようなベストセラー作家まで。これらの本から私はたくさんのことを学んだ。いろんな文化や自分とは違う考えについて読んだり学んだりすることがとくに楽しかった。
 
 
 読書したり、サドベリー・バレーのいろんな人たちとおしゃべりしたりして、たくさんの時間を過ごしたあと、私は考え始めた。「私は何になりたいのか?」「私の未来ってどんなもの?」。たった一年前には、「分からないし、どうでもいいわ」と思っていた。でも突然のことだけれど、私はそのことを気にするようになっていたし、自分の中には自信も生まれていた。ビジネスを学び経済的な自立を獲得したくて、私はブレイン美容専門学校に入ることに決めた。毎日サドベリー・バレーに通い、その後でブレインで夜間のクラスに参加した。長い時間の中で、自分にできることはもっとあるのでは、と思い始めた。何かがしたいという自発的な思いの下に行動する自分を発見して、驚くと同時にそんな自分を楽しんだ。ブレイン専門学校では、サロンに来たお客さんの髪を整えてカットする機会が生徒に与えられた。私にとって、それは大きな学びの経験だった。なぜなら、プロとしての環境で人と接する仕方を学べたのだから。ブレインでの筆記科目は容易に吸収することができ、試験では高得点を取ることができた。今まで勉強に対して失っていた自信を取り戻した。一年半ブレインで学ぶという目標を果たした後、ブレインを卒業し、美容師の免許を得た。
 

 卒業した後で私は、自分が大学に行って、より高いレベルの教育を受け、自分が経験したようなことを経験している人を助けたいという思いがある。自分が経験した混乱を通して私はとても重要なことを学ぶことができた。今では、私は自分のストレスに対処することができることがわかっている。なぜなら、すでに多くのことを乗り越えてきたのだから。私にとって大学進学は自分の目標に到達するまでのひとつの手段であり、心理学を学ぶこと、そして臨床心理士になることも私の目標だ。