家庭教育支援条例案に対する緊急声明

親学推進協会理事長 高橋史朗氏へ

>発達障害の原因は先天的な基礎障害(impairment)ですから予防はできませんが、斎藤万比古総編集『発達障害とその周辺の問題』(中山書店)によれば、乳幼児期の早期に出現するとされる能力障害(disability)、さらに、学童期から思春期にかけて出現するとされる二次障害は「個体と環境の相互作用の結果の産物」として理解する必要があり、一つの側面として「発達障害は関係障害である」とも指摘されています。

これに関しては斎藤万比古さん自身がこれで引用されていることに気が付かれたらなんと言われるか、想像がつきますが、想像でものを言っては同類になりますので避けます。

ただこの文章をちゃんと読まれたらわかることですが
>学童期から思春期にかけて出現するとされる二次障害は「個体と環境の相互作用の結果の産物」

ですから、この時期の「環境」といえばどこか?明白ですよね。当然、親の責任!とはどこにも書かれていませんし、示唆さえされていません。

>世界保健機関(WHO)は11年前に障害分類を改定し、個人の障害を環境との関係性の中で捉え、個人因子と環境因子の相互作用を重視する視点に転換しました。

これも明白。
本人の障害うんぬんと片付けないで「環境因子」も考慮に入れなさいと言っているわけです。

障害保健福祉研究情報システムから引用
「環境因子」は「人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子のことである」

どこにも「親が子どもの環境のすべて」と考えられるような狭義さはありませんよね。

>浜松医科大学の杉山登志郎教授は、高齢出産やたばこの影響、多胎、未熟児、生後から1歳までの環境要因の積み重ねが発達障害の要因になりうる

この中で、確かに、自分のたばこはやめられます。しかし、今の日本ではより害があると言われている副流煙を避けることは難しかったりしますし、他の要因は意図して何とかできるものでしょうか?
高齢出産になってしまう理由の一つは、若年層の低所得が遠因でもありますよね。それはいったい誰の責任でしょう?

>二次障害については、早期発見、早期支援、療育などによって症状を予防、改善できる可能性が高いといえます。

確かにそうだと私も思います。
二次障害に関しては、予防改善できる可能性は高い。
「親だけでなく」多くの関係者、特に教育現場での支援が非常に「重要」であると私は断言したいですね。

障害名を付けられてなお、適切な指導もなく、支援もないまま苦しんでいる多くの子どもたちがいることを私は見ています。

残念ではありますが「いまだに」発達障害を親の責任にする「だけ」で、まだまだちゃんと診断できる専門家も少なく、支援、指導、環境改善すべき立場の人間が、根拠のない責任転嫁でお茶を濁している現状では到底改善など望むべくもないと、改めてがっかりしています。

私はあの条例案を
>親を責め傷つけることにつながるという理由

で反対しているのではありません。
事実ではない、あるいは「事実の一部でしかないことをすべての原因であるかのように取り上げた事実誤認」について訂正を求めているのです。

>不当なレッテル貼り

は、どなたがしたのでしょう。
事実に基づかないレッテル貼りは誰が誰にしたのでしょう?

>親の「人権侵害」だと声高に叫ぶ人たち

今回のことに関して言えば上記は事実誤認です。
事実でないことをあたかも事実のごとく書かないでくださいますか?

私たちが我が身の危険も顧見ず、抗議したのは、発達障害を持つ子どもの親の人権を憂慮したのではありません。

発達障害と言われる「個性を持つ子ども達のひとりひとり」に対する「間違った概念」を正すことが「一緒にこの社会で生きてゆく私たちすべての利益」であるが故です。

したがって、
>父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって・・・・・心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする」と明記していることも忘れないでほしいと思います。

忘れないからこそ、今回の抗議があるのです。
この間違いを正すことこそが親の責任であり、大人の責任です。

>家庭教育支援条例の全体を葬り去ることは将来に禍根を残すことになります。

誰も「全体を葬り去れ!」などと言っていません。
衆知を集め、事実を積み重ね、今ある法にのっとった上であるなら、だれが反対などするでしょう。

>発達障害と虐待の関係(虐待の連鎖—虐待に起因する「発達障害的症状」)

これはすでに研究がすすめられていますね。
その結果、虐待の連鎖については否定されてきています。

>伝統的子育て(関わり方)

何をもって「伝統的子育て」と言っておられるのか?は存じませんが、
「世界共通の伝統的子育て法」は「子どもを含む社会全体が子どもの利益を最優先に考え、協力してゆく」ことです。
子どもは私たちすべての未来ですから!

>科学的知見に基づく情報の提供に努めてまいりたいと思います。

ぜひお願いいたします。