文学からとらえた日航墜落事故

日 時 2020年1月17日(金)13時30分〜15時
 大きな事故や事件が起こりますと、それを題材としてフィク
ション作品を書こうとする作家が散見されます。
 今回は、世界最悪の航空機事故とも言われた「日航123便
墜落事故」について、①小説「クライマーズ・ハイ」(横山秀夫)
と②ノンフィクション作品「日航123便・墜落の新事実」(青山
透子)をご紹介していただきました。
 ①は、作者自身が当時地元の新聞記者をしており、またこの
事故報道を担当していたことから、記事作成の経緯や新聞社内部の状況等が細かく表現されています。
 記者は記事を正確に、公平に、公正に作成する義務がある一方、特ダネやスクープも要求されます。
 結局 彼の取材グループは他紙より早く墜落の原因をつきとめながら、確証を得ることに固守したために他紙にスクープを許し、彼はまもなく地方へ左遷させられます。
 新聞記者としての使命感や倫理観とスクープ獲得の信憑性の間を垣間見ることの出来る小説です。
 ②は、ノンフィクションの立ち位置として構成された作品で、第1章は記録、第2章は政治家や日航関係者等の証言、第3章は地元小中学生の文集、第4章は目撃者証言そして終章は読者等の感想・・・と全て事実と実名で記されている由です。
 たとえば、政治家(総理大臣や運輸大臣等)の事故当日の発言と、後日の発言に微妙な差があり、見方によってはこれは事故ではなく事件ではないかとさえ思わせる記述のある興味深い作品となっています。