中里和人・写真展『夜・自然・もうひとつの東京』開催します!

現代美術製作所では、9月27日(土)から10月12日(日)にかけて、写真家の中里和人さんの写真展『夜・自然・もうひとつの東京』を開催します。

中里さんは、全国各地をフィールドワークして、エアポケットのように口を開く路地、古びた民家や廃屋、本来の用途を失い片隅に忘れられたさまざまなモノ、あるいは深い暗闇に浸された街角など、様々な表情を見せる、記憶の折り重なった風景やイメージを一貫して追い求めている写真家です。

中里さんは、2000年から墨田区の向島地域の路地を継続して撮影して来ました。その成果は、軒先の小さな草花に視線をめぐらせながら、向島の路地を夢のように鮮やかな色彩で写し取った『長屋迷路』(2004)や、闇に包まれた夜の向島の路地にカメラを向け、もうひとつの東京の幻に迫ろうと試みた『東亰』(2006)などの作品集として発表されています。

今回の個展『夜・自然・もうひとつの東京』は、向島地域とドイツ・ハンブルクのオッテンゼン市の、長年にわたる草の根国際交流の一環として、今年の5月から7月、オッテンゼン資料館で開かれた写真展『Nacht.Natur.Das andere Tokio-der Fotograf』を再構成して展示するものです。

展覧会の中心となるのは、写真集『東亰』(とうけい)に収められた夜の向島を撮影したシリーズ作品。明治維新を迎え、東京と書き改められた地名に反感を抱いた旧江戸の人々は、一時期「京」の字に横棒を一本加え「東亰」と呼びました。新しく、明るく、巨大な姿を志向する現代の都市とは位相を異にする、幻の都市のイメージをこの名に託して、中里さんは、夜の向島を撮影した写真集に「東亰」というタイトルを与えています。

レントゲンのようにまちの骨格を凝視するカメラワークを通し、昭和30年代的な下町ノスタルジーを超えた、もうひとつの東京・向島のイメージをみなさんに発見してもらう機会となるでしょう。どうぞご期待ください。(曽我)