「奇跡の教室」へ行って来た!

6月18日に開かれた橋本武先生の
『銀の匙』の授業に行ってきました。
これは、もうすぐ99歳になる橋本先生のもう一度、
教壇に立ってみたいとの27年来の願いが、
灘校の「土曜講座」の形で実現したもの。

スローリーディングで話題になった
『奇跡の教室』の主人公の登場とあって、
教室の前の廊下には、授業開始前から、
50名近いメディア関係者が溢れ、
先生の登場を今か今かと待っているのでした。

懐かしき教壇に立ちはからずも
 〝銀〟の授業のできる幸せ

教壇に立った橋本先生が開口一番、
詠まれた歌です。
生徒に配った26ページの手書きノートの
冒頭に書かれていました。

果たして、30年近く前に行っていた授業が、
今の子どもたちに通じるか、
固唾を呑んで聞いていたのですが、
学ぶ」と「遊ぶ」の二つの言葉から、
どんなことを連想するか?と
抽選で選ばれた中学2〜3年生、50人に問いかけた時から、
教室の空気が一変しました。

1人の生徒が「遊ぶのは好きだけれど、学ぶのはきらい」と
答えました。98歳の先生には聞こえません。
「もう少し大きな声で」
生徒が大声で答えても聞こえません。
「そばに来て言ってもらえますか」の言葉に、
生徒が教壇に上がり、先生の耳元で答えます。

この時、生徒と先生の間にあった壁が、
消えたように見えました。

自分の学生時代を振り返って、
色々学んだ記憶はあるけれども、
何を学んだか、少しも想い出に残っていない。
少しでも記憶に残る授業を行いたい、
そのためには、「学ぶ」と「遊ぶ」が一体となった授業しかない、
と橋本先生は『銀の匙』を中学校の3年間をかけて、
読み込んでいく授業を展開したのです。

「学ぶ」と「遊ぶ」で他に思いつくことはないですか?
と先生はさらに生徒たちに問いかけます。
もう1人の生徒が、
「どちらも〝ぶ〟がつきます」と答えます。

「そう、その通り。いい所に目をつけました。
じゃ、〝ぶ〟が付く〝ぶ付き動詞〟を書き出してみましょう。
それが、今の君たちの国語力です」
と展開していきます。

ある生徒は、〝あ〟から〝ぶ〟がつく言葉を捜していきました。
先生もそのやり方をつかって、生徒たちと探していきます。
「浮ぶ」「選ぶ」「転ぶ」「尊ぶ」「飛ぶ」……。
10単語思いついた生徒が最高でした。
(実際は20近く、ぶ付き動詞はあるそうです)

この自由な展開と飛躍。
学ぶ」と「遊ぶ」が結びついた
〝奇跡の授業〟の一端がうかがえた気がしました。