講座日誌(文学・文芸)②…『方丈記』(1)—鴨長明とその時代—

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日時:3月14日(木)午後1時半〜3時半
会場:すばるホール(富田林市)
講師:小野恭靖先生(大阪教育大学教授)
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〇1.ゆく河
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。・・・」
*有名な序章で、「河の水は刻々変化している。流れていないように見える淀みも、無数の水の泡が留まることはなく浮かんでは消えて、休むことなく形を変えている。この世は人間も自然もたえず移り変わり亡び去っていく、無常なものである。」

〇2.安元の大火
無常の体験の最初として、安元三年(1177)の大火を取り上げた。「…風が強くて、すごい晩だった。戌の時(午後八時)ごろ、平安京の東南から火事になって、西北へ焼けていった。しまいには、朱雀門、大極殿、大学寮、民部省などにまで火がついて、一夜のうちに灰になってしまった。…全体で、平安京の三分の一に達する家屋が焼失したという。」

〇3.飢渇
養和(1181〜82)のころ、二年間もつづく飢饉で、ひどいことがあった。(以下、省略)。

◆『方丈記』概説
鎌倉時代初期の建暦二(1212年)成立の随筆。鴨長明作。冒頭で人と棲家の無常をうたい、それを五つの天災の体験によって裏付ける。そして世俗を捨てた閑居生活の安楽さを語り、さらに仏教者としての自己を顧みて全体を結ぶ構成になっている。
・鴨長明の面白いところは、人生について同じくらいの比重と情熱をもって住居を語る。
・日本三大随筆:枕草子、徒然草、方丈記