読売ロコモ予防フォーラム](1)運動10歳若返り、認知症予防にも有効

読売ロコモ予防フォーラム](1)運動10歳若返り、認知症予防にも有効

(1)運動10歳若返り、認知症予防にも有効

 足腰の衰えで歩行などが困難になる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」を防ごうと、「第3回読売ロコモ予防フォーラム」(読売新聞東京本社主催)が1月31日、東京都千代田区のベルサール飯田橋駅前ホールで開かれ、約470人が参加した。

 第1部では、日本整形外科学会広報・渉外委員会委員長の石橋英明さんが、「骨と筋肉からロコモ予防を考える」と題して講演。第2部では、ロコモの専門家に、タレントの向井亜紀さんを交えて「食生活から考える。ロコモに負けないカラダづくり」をテーマにパネルディスカッションを行った。

 【主催】読売新聞東京本社

 【共催】ロコモチャレンジ!推進協議会

 【後援】日本整形外科学会

 【協賛】中外製薬、森永乳業

基調講演

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 ◇ 石橋いしばし英明ひであき 氏

 人間の体を支え、形づくるのが骨です。関節では 靱帯じんたい によって骨と骨がつながれていますが、それだけでは不安定です。筋肉は関節を動かすと同時に、補強する役割を果たしています。筋肉が弱いと関節が不安定になり、軟骨がすり減ったり痛みが出やすくなったりします。

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 運動する人としない人は、どう違うのでしょうか。

 運動能力調査のスコアを見ると、運動習慣がある人の方が点数が高い。運動習慣のある45歳と、習慣のない20歳が同じぐらい、75歳の運動する人と65歳の運動しない人が同等です。つまり、運動習慣があると10歳、体が若いということです。

 運動習慣があると運動機能が上がるだけではありません。糖尿病、高血圧、脂質異常症のガイドラインにも予防と改善に運動が勧められていますし、認知症予防にも運動が有効とされています。

 逆に、じっとしているとダメです。アメリカの大規模な調査では、1日にテレビを4時間見る人は糖尿病のリスクが1.5倍になります。テレビの見すぎや座りすぎはいけません。

 さて、みなさんは何歳まで生きると思いますか。平均寿命は女性が86歳、男性は80歳です。でも各年齢の人が平均であと何年生きるかという平均余命のデータからは、今の高齢者はほぼ90歳かその先まで生きることがわかります。

 ただ、年を取ると、要支援・要介護の人が増えます。そして、その25%が骨・関節疾患、つまり足腰の問題によることがわかっています。実は、脳卒中や認知症より多いのです。足腰の健康は重要です。

 2007年、日本整形外科学会が「ロコモティブシンドローム」という言葉を提唱しました。骨や筋肉、関節など運動器の障害で移動機能の低下を来した状態を指し、進行すると要介護になるリスクが高まります。運動器の障害には、運動機能の低下、運動器の病気が含まれます。

 骨や関節、筋肉は、年齢とともに弱り、遺伝の影響も受けながら、運動機能が落ちたり、足腰の病気が出てきたりします。こうした変化は、ゆっくり進行し、気づきにくいものです。生活に支障が出て気づいた時にはもう運動することができず、改善が困難になります。そして要支援・要介護が近づくのです。

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 早めに気づくことが大事です。特に骨は弱くなっただけでは症状に出ないので、50歳を過ぎたら、一度は骨密度を調べた方がいいと思います。

 ロコモの対策は、運動習慣を付け、適切な栄養摂取をし、運動器の病気に気をつけることです。栄養については、太り過ぎも良くないですが、食べなすぎによる低栄養も問題で、筋肉や骨が弱ってしまいます。早めの察知には、7項目の「ロコチェック」を活用してください。一つでも該当項目があれば、ロコモのリスクが高いといえます。

 運動は、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動と、筋力トレーニングを中心にいろいろな運動をしてください。運動は続けることが大切です。続けやすい運動を見つけてください。

 ロコモ予防の運動に、ロコモーショントレーニング(ロコトレ)といわれる、スクワットと片脚立ちがお勧めです。スクワットは足の筋力を効果的に鍛え、片脚立ちは転倒を約3分の2に減らしたというデータがあります。

 最後に一言、みなさんは平均でも90歳まで生きます。講演会に来るような元気な人は、100歳まで長生きするかもしれません。いつまでも元気に過ごして、天国への階段も自分の足で歩いてのぼってください。