海洋汚染:世界遺産守れ ベトナムへ「琵琶湖モデル」

海洋汚染:世界遺産守れ ベトナムへ「琵琶湖モデル」 排水処理・環境教育、ノウハウ提供

毎日新聞 2014年09月17日 大阪夕刊

 生活排水などによる海洋汚染が深刻化しているベトナム北部の世界遺産「ハロン湾」で、滋賀県が県内企業と協力して10月から水質改善に向けた支援を始める

琵琶湖の水質浄化を官民一体で進めてきたノウハウ「琵琶湖モデル」を生かし、将来的には環境保全に取り組む県内企業の振興にもつなげたい考えだ

 ハロン湾では近年、民家や宿泊施設から生活排水が十分に処理されないまま海に流され、赤潮が発生するなど水質が悪化。

汚染が続けば、世界遺産の登録取り消しになる可能性もあるという

 支援は近江八幡市の総合環境保全会社「日吉」が県に働きかけたのがきっかけで、国際協力機構(JICA)の「草の根技術協力事業」の一環。

湾内最大のカットバ島(人口約1万5000人)で2年半かけ、琵琶湖に関する県の規制を紹介したり、排水処理施設の管理・運営方法を指導したりする

「日吉」など2社と共に、水質分析の技術協力に取り組み、ごみ拾いの励行など地元の子供たちへの環境教育も行う計画だ

 滋賀県では工場の立地や人口増加で1960年代後半から琵琶湖の水質が悪化し、77年には「淡水赤潮」が大量発生。

原因の一つとされたリンを含まない粉せっけんを使う「せっけん運動」が主婦らを中心に起きた。

県は工場排水規制などに積極的に乗り出し、企業も水環境保全活動の団体を設立するなど官民が協力して水質改善を進めている。

 県は一連の取り組みを「琵琶湖モデル」として、水環境汚染が深刻な他の東南アジア諸国にも広げる意向で、今回はその第一歩。

県商工政策課の竹内雅美主任主事は「琵琶湖で培った知恵を生かし、住民の生活や世界遺産を守る道筋をつけたい。

県内企業が海外進出する足掛かりにもなるはず」と話す。【田中将隆】

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 ■ことば

 ◇ハロン湾

 ベトナム北部の景勝地。彫刻作品のような大小の奇岩が広大な湾に多数浮かぶ。山水画のような幻想的な景観が評価され、1994年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録された。外国人観光客を集め、湾内クルーズが人気。

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