野外活動と組み合わせ…里山歩き後、ひとっ風呂

温泉ライターの野添ちかこさんによると、利用者の減少に悩む温泉地では、生き残りのために新たな客を開拓する必要に迫られている。

「部屋出しの料理の品数を減らして料金を安くしたり、ウォーキングやヨガのプログラムを温泉入浴と組み合わせて美容や健康志向に訴えたり、多様化する宿泊客に合わせて取り組む宿が増えている」と話す。

野外活動と組み合わせ…里山歩き後、ひとっ風呂

入浴前に、山口さんは温泉の効能や入浴方法などを記者(左)に丁寧に説明してくれた(山形県上山市で)
 温泉と地域の自然や食文化を組み合わせ、健康増進を図る旅行スタイルは「ヘルスツーリズム」とも呼ばれ、関心を集めている。

 山形県上山市の、かみのやま温泉もヘルスツーリズムに熱心な温泉地の一つ。里山のウォーキングと温泉を楽しめると聞き、記者(39)が5月中旬に訪ねた。同市は、2009年から地元住民も観光客も参加できる「毎日ウォーキング」を行っている。

参加費は500円からで、希望すれば共同浴場の割引入場券ももらえるので魅力的だ。

 「筋肉や脳に緊張を与える軽度な運動と、リラックスできる温泉入浴の組み合わせは、心身の疲労回復に効果的とされています」と、元同市職員で、温泉を活用した観光資源活用に詳しい小関信行さん。

 この日のコースは高低差約129メートル、距離2・6キロ。緩やかな山道を、息が上がらない程度の速さで歩き、途中で4回、脈拍を計測する。「体力や健康状態を把握するのが目的。1分間の脈拍数が160から年齢を引いた数値までなら、適切な程度の運動」と、ウォーキングガイドの植松嵯知朗さちろうさんが教えてくれた。

 約1時間半でウォーキングは終了。心地よい疲労を感じながら、かみのやま温泉で最古の「下大湯共同浴場」へ向かう。その途中、日本健康開発財団認定の温泉入浴指導員の資格を持つ山口登市さんから、疲労回復に効果的な入浴方法を教えてもらった。

 「運動後は食事後と同じように、入浴までの時間は30分以上空けてください。複数回に分けてお湯に入ると体への負担も少なく、体が温まります。5分、8分、3分の『ほどほど、じっくり、さっと』と覚えるといいでしょう」

 丁寧にかけ湯をしてから、湯船に入った。言われた通り、5分入って休み、8分入って休み、最後は3分。汗が流れ、体の芯からポカポカになり、気分もすっきり。普段より温かさが長続きし、脚の疲れやむくみも消えた。「熱くない? 疲れは取れた?」。番台の女性が声をかけてくれた。

 共同浴場では地元の女性たちとおしゃべりも楽しめた。宿の部屋と温泉を往復するだけの温泉旅行と違って、発見や出会いがある。残念ながら日帰り旅行だったが、湯治の入り口に触れられた気がした。まとまった時間が取れたら、長期滞在をしてみたい。(上原三和)

2014年06月03日 08時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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