前回の続きです。七味唐辛子を薬や栄養学的な側面から説明していきます。

写真は

研修仲間に連れていただいて、初めてあの有名な小山ロールに出合いました。
時間帯がすいていたので少し並ぶくらいで買い求めができました。

遠くから来られているとのことで駐車場の整備員の方がテキパキと動いておられる様子に
改めて小山ロールの勢いを感じました。

早速、篠山のお世話になっている方にプレゼントさせていただきました。
篠山口駅に近い喫茶店で写真を撮りました。

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3.薬としての七味唐辛子

 これまでは七味唐辛子を「蕎麦」や「うどん」を例にとり、食文化との関わりから見てきました。

しかしながら七味唐辛子に配合されている九種類の薬味の中には実際に漢方薬として使われていたり、食品として重要な栄養特性を持っていたり、健康を維持する上で大切な機能性成分を含んでいるものもあります。

この項では七味唐辛子、九種類の薬味を薬や栄養学的な側面から一つ一つ説明していきます。

 『赤唐辛子』

 ナス科のトウガラシCapsicum annuum L.は南米原産で、熱帯では多年性低木となりますが、温帯では一年生草本で、使用部分は果実です。

 トウガラシは胃痛、消化不良、水腫、歯痛、痛風、リウマチなどさまざまな病気の治療に用いられてきました。風邪や扁桃腺炎にも良いといわれ、うがい薬にも含まれていました。ビタミンA前駆体であるカロチノイド類やビタミンC を多く含有しているので栄養学的にも重要です

。辛味成分はカプサイシンであり、アドレナリン分泌促進作用があるため新陳代謝を上げ、血液中の中性脂肪値を低下させます。近年、カプサイシンが発がん性物質に対し科学的予防効果があることが分かってきているため注目されています。

 
『山椒』

 ミカン科のサンショウZanthoxylum piperitum DC. は落葉低木で、実は辛味、葉は香り、風味豊かな香辛料です。秋になると山椒の実が熟してはじけ、黒い実(実は硬くて食べることができない)をのぞかせますが、この実を包んでいる外皮が最も香り高く、この外皮を細かくしたのが粉山椒で、蒲焼きにふりかけて使います。また、山椒の木はとても硬いのですりこぎや杖として利用されます。

中国最古の薬物書、『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』に蜀椒の名で下品(げぼん)の一つとして収録されているほど大昔から薬として重宝されてきました。

山椒の辛味成分はサンショールといい、唐辛子や胡椒の辛味成分と同じ種類です。青山椒の実を噛むとただ辛いだけではなく舌がピリピリと痺れますが、これはサンショールに麻痺(局所麻酔)作用があるためです。中国漢方では、この成分が胃腸を刺激し、機能を亢進させるため様々な処方薬に使われてきました。すがすがしい香りの成分はシトラネロールです。中国の混合スパイス花椒塩に利用されている花椒は別種のZ. bungeanum です。漢方処方薬でもあり、よく鎮痛鎮痙薬、駆虫薬とみなされる処方に配合されています。

 

『胡麻』

ゴマ科のゴマ Sesamum indicum L. は60~120cm の高さに直立する一年草です。原産地はインドネシアと熱帯アフリカです。ゴマの使用部位は種子であり、その種子の色により黒ゴマ、白ゴマ、黄ゴマ、金ゴマの4つに大別されます。日本では黒ゴマは胡麻和え、おはぎ、焼き菓子などに、白ゴマは胡麻油の材料や炒って種々の料理の香りづけに利用されます。

ゴマには酸化を抑制し、老化を防ぐビタミン E や、動脈硬化を防ぐリノール酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸が多く含まれ、血中脂質を調整する効果が高いことが知られています。さらに、ゴマ特有の抗酸化物質でゴマリグナンの1つ、セサミノールが人体にとって極めて毒性の高い過酸化脂質を除去して、不飽和脂肪酸の働きをサポートすると共に細胞の老化や癌化を防いでくれます。また、ゴマにはカルシウム、マグネシウム、鉄などが含まれており、骨粗しょう症の予防にも良いとされています。薬用に用いられるのは黒ゴマで、滋養強壮、解毒薬として用いられます。中国最古の医薬書『神農本草経』にも黒ゴマを不老長寿の “君薬” として「生命の源である」と賞賛しています。

 

『芥子(けし)の実』

 B.C. 2000年から1000年の間にわたりエジプト人は薬用植物としてだけでなく、この種子を砕き、食用油を採るためにもケシを栽培していました。また、A.D. 1世紀にプリニーは、その時代にポピュラーなものであった炒ったポピー・シードと蜂蜜を混ぜ合わせた香ばしい食物について記述しています。また、ギリシャの医師ガーレンは、香り高いパンを焼くのに小麦粉にこのポピー・シードを混ぜ込むことを推奨していたそうです。中世には、パンの薬味としてポピー・シードを使うことがヨーロッパにも広がりました。植物油の含量が高い(50%)のでオイル・シードとも呼んでいたそうです。この種子を煎ったり、焼いたりすると、快いナッツのような香味とポリポリした歯ざわりをもつようになります。タンパク質の他、カルシウム(100 g 中 1700 mg)などのミネラルも豊富です。シードに香味づけ以外の効能はほとんどありませんが、古く漢方で、止瀉薬の効能が伝えられています。

 

『麻の実』

 クワ科の大麻の種子を用います。ヨーロッパや中国では古くは食用とされており、特に中国では五穀のひとつとして主食にされていた時代もありました。煎ると芳香を生じ、スパイスとして食欲増進の他、古代中国では強壮など薬用としても利用されていました。たんぱく質が多く100g 中30g 弱と、ごまの約 1.5 倍に上ります。脂質も100g 中28g 弱と多めです。亜鉛が含まれ、成長障害や皮膚炎予防に効果的です。

 

『陳皮』

 ミカン科のウンシュウミカンCitrus unshiu Markovichの成熟した果実の皮のことで、古い皮ほど効能が高く、10〜15年ものの陳皮は朝鮮人参より高価とされています。「陳皮」の「陳」は「老いた」とか「古い」と言う意味です。原名 “橘柚(きつゆう)” で『神農本草経』の上品(じょうぼん)に収録されたものが現在の陳皮の基と考えられますが、その後、橘皮、黄橘柚、陳橘柚、陳皮、橘紅、紅皮などの多くの関連名称が見られ、ちょっと複雑です。主成分は精油(リモネンを主成分とする)、フラボノイド配糖体、ペクチンなどです。主として漢方処方薬で、健胃消化薬、鎮咳去痰薬とみなされている処方、及びその他の処方に比較的高頻度で配合されます。

 
 『生姜』

 ショウガ科のショウガZingiber officinale Roscoeは熱帯アジア原産の多年草でその根茎を薬用、食用に使います。『神農本草経』に中品(ちゅうぼん)として収録されおり、古くから薬として重用されてきました。干した生姜は鎮痛、鎮咳、解熱作用が強く、その効果は生のそれより数倍も高いため、現在も漢方では風邪薬に生姜がよく配合されています。また風邪の民間療法として、熱湯に生姜と砂糖を加えた生姜湯や生姜酒などがよく利用されています。一方、体を温める働きのある生姜は色々な薬膳料理に利用され、体力の弱った体にとてもよさそうです。いずれにしても生姜は夏には食欲増進に、冬には解熱、鎮痛に、美味しくて体に良い辛味として、日本人の食卓に欠かせない香辛料の一つです。

 乾生姜及び生姜の名称で漢方処方薬とされ、かぜ薬、健胃消化薬、鎮吐薬、鎮痙薬とみなされる処方及びその他の処方に高頻度で配合されています。

 

『青紫蘇』

 シソ科のアオジソPerilla frutescens Brittonは中国原産の一年草でその葉を薬用、食用として利用します。精油成分はシソ油で、シソアルデヒド(ペリルアルデヒド)55%のほか、リモネン、ピネンなどが含まれています。シソには殺菌、防腐作用があり、昔から着色や香り付けもかねて梅干しに利用されています。その他咳や痰止め、発汗、健胃、整腸、食欲増進など、幅広い効果を有しているため、葉(蘇葉)、種子(紫蘇子)、茎など全体が漢方でさまざまに利用されています。漢方処方用薬としては、鎮咳去痰薬、かぜ薬とみなされる処方、その他の処方に少数例配合されます。配合剤(胃腸薬)に芳香健胃薬として配合することがあります。

 
『青海苔』

 のりは海草類の中でもきわだってカロチンが多く(2 g 中に 440 mg)、干しのり1枚(2 g)でピーマン2個にほぼ匹敵する量のカロチンが含まれています。その他にもビタミンB1、B2、C、ナイアシンも含まれ、食物繊維に富みます。カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅なども生体に重要な金属も含まれるため、食品として重要な栄養特性を持っています。毎日食べると、細胞の老化が抑制されて免疫力も強化されて老化予防に大きな効果を発揮します。薬として使われることはほとんどありません。