私の母方が京都なので京都に行くと必ず七味を買っています

昨日はとても素敵な出会いがありました。

これからの「農」と「食」のコラボでご一緒に活動ができたらうれしいなと思っています。
そんな思いがいっぱいになるお人柄の方です。良いご縁になるように祈っています。

お会いしたのは廣瀬食品の廣瀬社長さんです。お見受けしたところ根っからの職人さんです。
http://hirosefoods.jimdo.com/

写真は廣瀬様よりいただきました生七味です。
さっそくかえって家にあるそうめんで生七味たっぷりで頂きました。

とてもおいしくまた違った食感ではまりそうですね。ぜひブログの読者の方にもご紹介したく思っています。

私は以前から個人趣向的に七味大好き人間です。
うどんには必ず、塩付けのお漬物にも振り掛けますし何か物足りないのには七味です。

私の母方が京都なので、また母はうどんが好物でしたので、京都の七味でいただいたものです。懐かしい母との思い出ですね。

京都に行くと必ず七味を買っています。お土産にも喜ばれています。
このたび何気なく好きだから使っていた七味を調べて見ました。

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b>七味唐辛子のお・は・な・し 

1.初めに

 「赤唐辛子(あかとうがらし)」、「陳皮(ちんぴ)」、「山椒(さんしょう)」、「胡麻(ごま)」、「芥子(けし)の実」、「麻(あさ)の実」、「青紫蘇(あおじそ)」、「生姜(しょうが)」、「青海苔(あおのり)」と聞いて、すぐにこれらが日本が世界に誇る七味唐辛子の中身だと言い当てることのできる人が何人いるでしょうか?

七味唐辛子は日本の食文化史上稀に見るドライスパイス(香辛料)を用いた混合スパイスです。ところで、「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・・・・・、アレッ?七味唐辛子は七種類の薬味のはずなのに、九種類もあるぞ・・・」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

 日本人の食生活に欠かかすことのできない七味唐辛子、私たちはそのことについて知っているようで実はあまり分かっていないような気がします。

そこで今回は、七味唐辛子のルーツ、七つの薬味のブレンドの仕方、効能や食材との関わりなどについてお話をしていきたいと思います。

 

2.七味唐辛子のルーツ

2−1.トウガラシの歴史

 先ず、七味唐辛子を語る前に中に入っている七種類の薬味のうち辛味成分であり、かつ七味唐辛子の主役であるトウガラシのお話から始めましょう。

 トウガラシは中央アメリカ、南アメリカおよび西インド諸島が原産地であり、すでにおよそ9000年前に栽培され常食されていたとされており、中南米のインデイオ達がトウガラシを薬用に使用していて、「アヒ」と呼んで痙攣や下痢を治療するのに服用していました。

今では世界の三大スパイスといわれている「ペパー(胡椒)」、「シナモン(桂皮)」、「クローブ(丁子)」と肩をならべるほど、いや、ある意味ではそれ以上に世界中で広く使われているトウガラシですが、このスパイスが中南米以外の地で認知された時期はペパーなどに比べると驚くほど最近なのです。

 トウガラシ(チリ)を世界中に広めた人物は、かの有名なクリストファー・コロンブスです。コロンブスは新大陸を発見した1493年にコーカサスのペパー(胡椒)よりももっと辛く、種類も色彩も豊富なトウガラシ(チリ)を偶然発見し、それをスペイン(ユーラシア大陸)に持ち帰ったとされています。

さらに50年後の16世紀中頃には南米を出たトウガラシが日本へ渡来することになります。

 2−2.七味唐辛子の誕生

 日本での七味唐辛子のルーツは1625年(寛永2年)、初代からしや徳右衛門という人が江戸、薬研堀(やげんぼり)で売り出したことから始まります

。薬研堀は現在の東京は両国橋のあたりで、「薬研(やげん)」とは当時の薬(漢方薬)をすり潰す道具の事であり、その名の示すように周囲は医者や薬問屋が集まっていた所だそうです。

当時、漢方薬を食に利用できないかと考案されたのが七味唐辛子です。

この最も古い歴史を持つ『やげん堀唐辛子本舗』(以下『やげん堀』と略します)の七味唐辛子は「生の赤唐辛子」、「煎った赤唐辛子」、「粉山椒(こなさんしょう)」、「黒胡麻」、「芥子の実」、「麻の実」、「陳皮」の七種類の薬味が入っています。

当時、江戸庶民のポピュラーな食べ物であった蕎麦(そば)にピッタリと合う薬味であったので人気が高まりました。

後の項で詳しくお話しますが、これら七つの薬味の多くは風邪にとても良く効く漢方薬であり、江戸庶民が七味唐辛子をかけた熱い蕎麦を食べて風邪を予防していたのではないかと考えることができます。

蕎麦と七味唐辛子の中の辛味であるトウガラシだけに焦点を当ててみてもおもしろい事実が分かります。蕎麦を作る原料のそば殻にはルチン (1) (ポリフェノールの一種)という水溶性ビタミン(ビタミンPと呼ばれる)に似た働きをする物質が大量に含まれており、このルチンが毛細血管を強化する働きで高血圧や心臓病、脳血管障害を予防するなど高い薬効性を示す他、体のほてりを抑える働きがあります。

一方、トウガラシに含まれている辛味成分はカプサイシン (2) という化学物質です。このカプサイシンは今注目されている化合物の一つで、人体に対して非常に良い働きがあることが分かっています。

中でもカプサイシンにはアドレナリン分泌促進作用があるため、油分(脂肪)を身体の中で燃焼させ脂肪組織重量、血清トリグリセリド(血液中の中性脂肪)を低下させることが科学的にも実証されています。

このような理由から近年、若い女性を中心にトウガラシが「ダイエットに良い」ということで騒がれていることは皆さんご承知の通りです。もちろん、寛永年間の江戸時代に唐辛子ダイエットが流行ったわけがないでしょうが・・・

風邪でほてった体を蕎麦で冷まし、発熱による悪寒を新陳代謝促進作用のあるトウガラシで発汗させて解消する。

科学的根拠の無い江戸時代に、江戸の人々は理にかなったすばらしい風邪撃退法を実践していたわけです。このことからも七味唐辛子のルーツは医食同源そのものであると言い切っても良いでしょう。

 『やげん堀唐辛子本舗』の七味唐辛子が、当然のこととはいえ、古くは江戸時代の寛永年間から350年余りを経た今でも伝統を守り続けていることに感動を覚えるのは筆者だけでしょうか。

 2−3.その他の七味唐辛子屋さん

 さて皆さん、これで日本で最も古い七味唐辛子屋さんは、東京にある『やげん堀』の七味唐辛子であることがお分かりいただけたことでしょう。

ところで、日本には『やげん堀』の他に江戸時代から続いている2軒の七味唐辛子屋さんがあることを、そしてその2軒の七味唐辛子屋さんが使っている七種類の素材も『やげん堀』のそれとは少しずつ違っていることを知っていますか。

ここでは2軒の唐辛子屋さんの紹介とブレンドされている素材の種類が違っている理由について考えてみます。

 江戸庶民の間で人気になった『やげん堀』の七味唐辛子はしだいに東京(江戸)から関西(京都、大阪)へと広がり、やがて長野の善光寺と京都の清水寺の参道に、その土地の食文化に適した独自の七味唐辛子を売る店が現れました。

それが『八幡屋礒五郎(やはたやいそごろう)』(長野)と『七味家(しちみや)本舗』(京都)の2軒の七味唐辛子屋さんです。

 『八幡屋礒五郎』の七味唐辛子に使われている七種類の薬味は「赤唐辛子」、「生姜」、「陳皮」、「山椒」、「黒胡麻」、「青紫蘇」、「麻の実」です。また、『七味家』が使っている薬味は「赤唐辛子」、「山椒」、「白胡麻」、「黒胡麻」、「青紫蘇」、「青海苔」、「麻の実」の七種類です。

 『やげん堀』、『八幡屋礒五郎』、『七味家』で使われている七味の薬味の違いを一目で分かるように表にまとめてみました(表1)。『八幡屋礒五郎』、『七味家』とも、最も古い歴史がある『やげん堀』の七味の素材とちょっとだけ違うことが分かります。

その違いとはいったい何でしょう?。江戸、長野そして京都へと西に向かうにしたがって、辛味よりも香りを重視したブレンドになっているように思われます

。東の江戸と西の京都で比べてみましょう。『やげん堀』のブレンドでは七種類の薬味のうち二つが「赤唐辛子」で、実際に使われている素材は七種類ではなく六種類です。また、ウンシュウミカンの皮を乾燥した「陳皮」には苦味もあります。

一方、『七味屋』の七味唐辛子には香りの良い「白胡麻」、「黒胡麻」、「青紫蘇」、「青海苔」の四種類の薬味がブレンドされています。また苦味のある「陳皮」は使われていません。

ちなみに、京都『七味家』の七味唐辛子もブレンドされている七種類の薬味のうち二つが「胡麻」(白と黒)ですから、実際には、江戸『やげん堀』と同じように六種類の薬味で作られていることになります。

これまでのお話から、”七味唐辛子” と一口に言っても日本には300年以上の時を刻んだ3種類の七味唐辛子があるという事がお分かりいただけたのではないかと思います。

 さて、それでは次に何故、日本三大七味と言われる『やげん堀』、『八幡屋礒五郎』、『七味家』でブレンドされている素材に違いがあるのかを考えてみましょう。

 その答えはそう簡単ではなさそうですが、関東と関西の食文化の違いに一番の理由がありそうです。それは「蕎麦(そば)」と「うどん」の文化と置き換えることができます。豊かになった現代でこそ、私たちは七味唐辛子を使って色々な料理を味わうことができます。

しかしながら、江戸時代当時、関東では「蕎麦(そば)」、関西では「うどん」が最も庶民的な食べ物でした。そして、蕎麦つゆが濃い口の醤油味であるのに対して、うどんのそれは昆布やかつおの風味を大切にした薄口の醤油味であることが両食文化の違いを如実に表しています。

『やげん堀』の七味唐辛子は濃い口の醤油味に合うように辛味を強調したブレンドに対して、『七味家』の七味唐辛子は風味を大切にした薄口の醤油味に合うように香りの良い薬味が多く使われているのです。

 このように、 関東の【”濃い味” 文化】と関西の【”薄味” 文化】が七味唐辛子に使われる薬味のアレンジを変えたと結論することができます。

長くなりますので続編、続きとして載せさせていただきます。