福知山市認知症予防の会 その3

第2章 スリーA増田方式認知症予防教室ゲーム指導者養成講座
 
第1回 

とき: 2009年7月11日
ところ: 福知山市総合福祉会館 第34号、第35号室
出席者数:
午前の部 受講者29名 市保健センター1名 地域包括2名 予防の会のメンバー6名

午後の部 受講者33名 市保健センター1名 地域包括3名 予防の会のメンバー7名

講師:高林実結樹、福井恵子

今日から、いよいよゲーム指導者養成講座の始まりです。前述のように、受講生は、午前と午後の2組に分かれて講習を受けます。午前と午後は全く同じ内容の講座です。2つに分けたのは、受講生の人数が多いことにもよりますが、なるべく休んで欲しくないので、自分の登録した時間に参加できないときは、できるほうに出席してもよいことにしました。おかげで、欠席者はぐんと少なくなったと思います。

ところが、困ったことが一つ。京都から、AM10時までに到着するJRの特急が無いのです。講師の方には前泊をお願いするより仕方ありません。前泊して、一日に2回の同じ内容の講座、なんとも過酷なお願いですが、NPOの優しい講師さんたちは、6人全員が了承してくださいました。ただただ感謝あるのみです。

村岡は、まず、この講座は、講座の修了生が、地域包括支援センターが実施する「認知症予防教室」にボランテイアとして参加することを前提に開催していること、講座を修了した後には、必ず、ボランテイアとして「認知症予防教室」を援助して欲しい、とくどいほど強調しました。

 また、認知症予防教室による、効果を測定する方法として、かな拾いテストとMMSテストについても資料を準備して説明しました。出来れば、受講生さん達についても、この二つのテストを講座開始前と後とに実施したいと思ったからです。講座に参加してくれていた保健師さんを壇上に呼んで、説明をお願いしました。当然MMSテストについては、ご存知でしたが、現在、保健所や地域包括支援センターでは、採用していないそうです。とてもこのような多数の参加者に対して、テストを実施することは、不可能ですので、今回は、あきらめることにしました。 

 高林さんのお話は、プレシンポのお話をなぞりながら、丁寧に、認知症の方の思いと症状をフォローし、スリーAのゲームと“優しさのシャワー”によって、認知症の症状を引き戻していった状況を、「お経を思い出しお葬式を一人で取り仕切ることが出来るようになったお坊さん」や、「長いこと放置していたセーターを編み上げた」女性、全てのことに興味を失っていたのに、しだいに、色彩豊な絵を描かれるようになられ、帰宅後絵画教室に通って展覧会に入選、ついには個展を開くまでになられた女性」、「思いあまってスリーAの門を叩いた頃の自分の混乱していた様子を振り返ってきちんと文章に書くことが出来るようになられた男性」の話など、初期の合宿型の様々な事例を提示しながら解説されました。

さらに、一見、認知症の症状など無いように見えた特定高齢者や、健康な男性が、全く無関心であったお仲間さんに対して、笑顔を示し始め、自分より“弱い”方を優しくいたわるようになって行かれ、ついには、市民運動を始められて市の事業化を成立させた通所型の男性の事例や、施設でこれまで腹を立ててはとがめ立てしていた、認知症の方をかばうようになって行かれた女性入所者の例を通して、“これこそが予防です”とわかりやすく示して頂きました。

 福井講師は、お母様の在宅での引き戻しの様子を話して頂きました。一階と2階に棲み分けていながら、一緒に土いじりをしてお花を一杯咲かせていた、お母様が、ある日特にご自慢であった沢山の桜草をすっぽり忘れてしまわれた時のショック、考えてみれば、いくつかの“思い当たる”前触れもあった、

90歳になって面倒がる食事を届けるようになったことがいけなかったのか——-口をへの字にした険しい無表情な顔、日に何度もの捜し物、料理が出来ないなどその症状は急速に進行して行きます。

 福井さんは3ヶ月目、思い切って、妹さんに留守を頼み、静岡のスリーA予防教室指導者研修会に参加されました。「認知症は、病気である、寂しい病気であり、不安がとても強い、恐怖感がある」事を頭にたたき込み、優しさのシャワーの第一歩は、何もしないでひたすら傍にいること、から始めたと言われました。

家族や、親戚にも協力を頼み、様々な行動に対して、その都度、適切に懸命に対応していった結果、もの忘れは戻りませんが、母上に昔の笑顔が戻り、煮物がおいしく炊けるようになり、桜草の自慢、福井さんの留守中にあったことをメモして伝言する、一人でバスを乗り継いで外出する、など「100日目の奇跡」が実現した経過は、ゲーム実施の時間を気にされて短い時間ながら、受講生が知りたかった、在宅でのスリーAの取り組みを伺えて聞く人の心を励ますものでした。

 ゲームは、40名近い大所帯ながら、机を片付け、輪になって高林さんの名リード、福井さんのお隣さんへのフォローの仕方の例、後半は、福井さんの優しいリードなどで、「その1」のゲーム—“指を使って数えよう、歌いながら1,2,3、グッパー体操、でんでん虫、お茶壷、グーチョキパー”など、初めての体験に笑いの漣と「エーツなんで?」という喚声のうちに進められました。

高林さんの、簡単なゲームの中にこめられた、からだの各部の運動、集中力、ルールの理解と記憶の継続 、歌詞を思い出す、歌いながらからだを動かすなどの相乗効果が脳活性化につながる原理と何より気をつけなければならないリードの仕方や優しさのシャワーの注ぎ方など丁寧に解説してもらって納得していました。

歌いながら1,2,3、グッパー体操、でんでん虫、お茶壷、グーチョキパー”などでは、みんな大間違い、難しいねー、何で間違えるんやろ、自分がこんなにドンくさいとは思わへんだわ等と笑いながら、人の間違えるのを見て安心して、また笑い、なんとなく慰められ、自信と連帯感が生まれてきて嬉しくなる、など、ゲームの狙い通りにはまっていました。

3時間という長い時間をとったので、一人ひとりが交代でリーダー役を務め、充実した一日でした。まずは、体験学習は大成功です。

(福知山市認知症予防の会 村岡洋子)

 福知山市認知症予防の会「その4」につづく