雪中の未来遺産調査(平成23年2月11日)

ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。

この日孟子不動谷は、朝から銀世界でした。
これだけ孟子に雪が積もったのを見たのは、初めてのことの
ような気がします。

落葉広葉樹(クヌギ、コナラ、ヤマザクラ)優占の山腹部は、
「霧氷」を思わせるように枝という枝に雪が積もり、水墨画
の世界になっていました。

真っ白な「エビフライ」をいっぱいにつけたノグルミの枝にツ
グミが止まっています。
犬飼池には、久々にミサゴが狩りに来ています。
降りやまぬ雪の中、上空にやっこだこのように、ノスリの成
鳥が浮かんでいます。

今日は県立向陽中学校理科クラブによる、未来遺産調査の
日です。
この大雪で、残念ながらフクロウの巣箱にカメラを設置する
ことはできませんが、ニホンアカガエルとカスミサンショウウ
オの調査を行います。

それと、彼らに「雪」というものをしっかり心に刻んでほしいと
思っています。
この雪の中で、産卵を開始するカエルとサンショウウオがい
るということを、しっかり心に刻んでほしいのです。
最近めっきり少なくなった雪・・・
しかし昔は、和歌山でも、このくらいの雪は「ごく普通」であっ
たにちがいありません。

そんな時代、どこの田んぼでも、水路に溜まった湧水の中に
、雪の中彼らがあたり前のように、産卵していたに違いありま
せん。
4つの明瞭な季節を持ち、さまざまな気温の多様性を持つ温
帯モンスーン気候下の日本列島にあって、その気温の多様性
の中に遺伝子を置きつつ営々と繰り返されてきた彼らのいとな
みを観察するには、この雪は最適の天気と思います。

10時
前川先生に引率されて来た中学生諸君は、さっそく、雪合戦を
はじめました。
それぞれに雪を丸めて掴み、お互いにぶつけあいます。
ひとしきり雪合戦をしたあとは、雪だるま作りです。
これも「調査」の一環です。
雪と戯れる風習は、決して北国の子どもたちのみの「特権」で
は無かったはずです。

西高東低の冬型の気圧配置がビッシリの盛冬には、確かに日本
海側でしか降らない雪も、年が明け、節分が過ぎ、完璧冬型の気
圧配置が壊れるころ、「三寒四温」の「三寒」のタイミングで、太平
洋側にも雪が降るのです。

その太平洋側に雪が降る季節、南の子どもたちは雪合戦に興じ、
ニホンアカガエルとカスミサンショウウオは産卵を開始したのです。

この「あたり前の季節」の中の「里山文化」の意味を、彼らが理解
するのには、この雪が、どうしても「必要不可欠」とも言えるのです。

ひとしきり雪合戦と雪だるま作りに興じた彼らを集め、調査開始で
す。

シャーベット状になったとんぼ池の水の中に、ニホンアカガエルの
卵が並んでいます。
彼らの未来遺産調査は、昨年4月に開始されました。
その時にはとんぼ池には、500頭を超えるニホンアカガエルのオ
タマがいました。
彼らの「カエルの里山物語」は、「ここから」はじまっているのです。
確かに昨年末、県立自然博物館での彼らの発表は見事でしたが、
やはり「ここから」はじまる「カエル物語」ではダメなのです。

本当の「里山のカエル物語」は、雪降る「ここから」はじまることを
知らないといけないのです。
雪の中、カウンターを片手に、かじかむ手で、カウンターを押す・・・
これを体験して初めて本当の「里山のカエル物語」が完結するの
です。

昨日下見に来て本当に良かったと思いました。
彼らに、この寒中、産卵待機するカスミサンショウウオの成体の
姿まで見てもらうことができたのですから!!

「こんな雪降ってるのに・・・コイツ変温動物なんでしょ?」
口ぐちにそう尋ねてきます。

これは話に聞かされだけでは決して理解できないのです。
実際この雪の中で、しっかりと呼吸しながら、倒木の下で「その時」
を待つ、カスミサンショウウオの姿を見て初めて、彼らも「里山の
カエル物語」の「真の証言者」になれるのです。

「カエルの卵を1つ掬って、卵の数を数えてみよか」

そう提案します。
これにも「訳」があります。
卵の数を、カウントする。
そして3月再度卵が出揃った頃のトンボ池の中のニホンアカガエル
の卵塊の個数をカウントす。
この2つの値の積を求め、とんぼ池に産卵された卵が全部孵化した
ら何頭のオタマになるかを概算します。

それと昨年4月以降カウントした、とんぼ池のニホンアカガエルのオ
タマの数を比較します。

「すべての動物の命は、つながり合っている」
こういうコメントは、よく耳にするコメントです。
環境大好きで勉強熱心な彼らなら、一度は聞いたことがある筈です。

しかし「言葉」「概念」で理解しても意味がないのです。
それを「本質」で理解すべきなのです。

彼らは今回、タマゴの個数を数えることで、上のコメントを「本質」で
理解するにちがいないと思います。

卵の時代に「寒の戻り」に合い、卵が凍って死滅する。
卵の時代にカラスに卵を食べられる。
孵化したオタマを食べに、カワセミがやってくる。

カエルになる前に、膨大な数の卵がこのように死を迎えるのは、決し
て「残酷物語」でも「命の浪費」でもないのです。
「死」というプロセスの中で、無くなったように見えるのは、それを食べ
た生き物の中で、真っ赤な炎をたてて燃え続け、命が引き継がれるの
です。

つまりこれが「つながりあっている」という意味そのものなのです。

この寒い雪の中、楽しい雪合戦と一緒に、彼らは里山を理解するうえ
で大切な2つのことがらを「学んだ」のでした。

午後からは「お城の動物園サポーター」の川島さん&松本さん、わか
やまNPOセンターの岩田理事長夫妻&高橋さんが加わります。

午前中の調査で勉強したことを、みなさんに中学生の口から、インタ
プリテーションしてもらいます。

「最も効果的な読書法は、その内容を、誰かに説明するというつもり
で、本を読むことである。」
NHK「週刊子どもニュース」でおなじみの、池上彬アナウンサーの言
葉です。

学んだことをすぐに他人に伝えるプロセスを用意する・・・
このことで彼らの理解がより深まると確信しても今回の試みでした。

たどたどしいものの、彼らは本当に一生懸命に、案内をしています。
そして午前中の調査で学んだことがらを、すべてまちがえることなく
川島さんたちに伝えています。

ありもとは、本当にうれしく思いました。
無理をしてこの雪の日に、調査を行って本当に良かったと思いました。

未来遺産プロジェクト最終年度が間もなく幕を開けます。

昨年にもまして彼らが逞しく成長することを、今回の調査で確信した
ありもと@孟子でした。
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<鳥類>
ミサゴ、ノスリ、ビンズイ、ヒヨドリ、モズ、ルリビタキ、シロハラ、
ツグミ、トラツグミ、ウグイス、エナガ、ヤマガラ、シジュウカラ
メジロ、ホオジロ、アオジ、カワラヒワ、マヒワ、ウソ、シメ
イカル、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス
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