孟子不動谷便り

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@ 平成21年7月2日(火) @
@ 〜 今年2度目の和大付属小 〜 @
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ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。

今日は二十四節季「半夏生」です。
半分夏の季節という意味なのでしょうか???
いま孟子はハンゲショウが満開です。
どくだみ科の湿性植物で、近年圃場整備等の影響で各地
で数を減らしています。

ハンゲショウが満開の梅雨の一日、今年2度目の和歌山
大学付属小学校の皆さんを迎えるため、9:30から孟子
に待機しています。

それにしても昨夜から今朝の雨は良い雨でした。
入口で出会った森さんも、榎さんも、久々のまとまって梅
雨らしい雨に、満面の笑顔です。

ホトトギスが叫び声を上げる孟子に、40名強の小学生た
ちの、黄色い歓声が響き渡ります。
前に注意したので、スカートで来ている子は流石にいませ
ん。
感心なことに何人かはゴム長を履いています。
半ズボンの子がチラホラいるのはちょっと残念ですが、み
んなゴム長かスニーカーを履いているので、彼等もかなり
「成長」したようです。

また、同伴の保護者の方々も変化しています。
前にはファッション雑誌から抜け出て来たようなスタイルの
良いお母さん方も、今日はちゃんと長靴をはいています。

なんとか里山で観察ができる服装になったみんなが、今日
は参道を歩きながら、水田まわりの生き物を観察しながら
歩きます。

谷間を形成する雑木林から、キビタキとサンコウチョウの声
が響きます。
上空をオニヤンマの半成熟に混じって、ウスバキトンボが
飛んでいます。
わんぱく公園ではすでに記録していますが、孟子では今日が
初見です。

ニイニイゼミが鳴き出しました。
2004年 6月20日
2005年 6月19日
2006年 7月 3日
2007年 7月15日
2008年 7月 8日
2009年 7月 2日
6年間の孟子におけるニイニイゼミ初鳴きの日を列挙すると
2007年を除けば6月下旬から7月上旬に集中しています。

今日の彼等への最初のメッセージは、水田に架設されたシ
シ柵です。
2000年に初記録されたイノシシ(イノブタ)を防御するため
に、孟子ではシシ柵が架設されています。

和歌山県の里地や丘陵地が里山になった時点で、一度イノ
シシは里からいなくなりました。
その当時の人は、里に現れる獣は猟銃で撃つか、罠を仕掛
けて捕えるのが普通でした。
毛皮を利用したり、肉を食したり、貴重な蛋白源だったので
す。
ですから当時の獣は、人間のニオイのしみついた田畑に近
づくことはありませんでした。
人間のニオイのするところにノコノコ出てきたら撃ち殺される
のがオチだからです。

しかし近年、獣の人間に対する感情が変わりつつあります。
今の人間は庭に現れるタヌキやキツネに、餌をやります。
猟銃を持っている人も、激減しました。
罠(トラバサミ)も、特別な理由なしに使用は禁止されました。

それによって、田畑は、獣にとって、おいしい食物が並ぶ
「レストラン」になりました。
そこに移入種のイノブタやアライグマ、ハクビシン等が加わり
和歌山県における獣害は数千万に及ぶようになりました。

「人間と獣の、最も良い関係って、どんなのか?」
まず、この質問を、投げかけてみました。

キオビベッコウが飛び交う参道を歩きながら、今日はクモ
に注目します。
クモを狩るベッコウバチが増えるこの時期、イモムシや毛
虫はチョウやガに変態し、替わりにチョウやガを網にかけて
捕えるクモの多い季節に変わっています。

林縁や水路の上に、斜めに網を張るのはチュウガタシロカ
ネグモとオオシロカネグモです。
シロカネグモの仲間は、薄暗い林縁の、水路の上に巣をか
けます。
水路から羽化して出るカゲロウやトンボを捕えるために、網
をななめに張る性質があります。

モチツツジの葉の間に、棚型の巣をかけるのはクサグモです。
棚型の網に虫がかかると、落とし穴のような穴の中から這い
出してきて、大顎で獲物にかみ付き、穴の中に引き込んで食
べます。

モチツツジの枝先に垂直に円形の網を張る、緑色の鮮やか
なサツマノミダマシはコガネグモの仲間です。

自分の食べた虫の食べカスを、縦に並べ、その真ん中に隠
れるように低位しているのはゴミグモです。
このゴミグモの仲間で背中に銀白色の斑点のあるギンメッキ
ゴミグモは、網を張るクモの大部分が下向きに定位するのに
、上向きの定位する珍しいクモです。

クモを見る間も、普段はなかなか出会えないハネナシコロギ
スやトゲナナフシを見つけてくれます。
やはり「目が多い」のは、素晴らしいことです。

クモを嫌う人が多いですが、クモ類は生態系の中の重要な
中間捕食者の位置をしめています。
クモはたくさんの小昆虫がいないと生きられないし、クモを
餌にしている動物はベッコウバチや小鳥をはじめ、いっぱい
います。
孟子には60種類を超えるクモの記録がありますが、クモ類
の種類数が環境の豊かさを示すともいえるのです。
これが彼等への2つ目のメッセージです。

丸嶋無農薬水田を横目で見ながら、参道を歩きます。
ハグロトンボや未成熟のオオアオイトトンボが飛んでいます。

今日はトンボ池で思いっきり観察することにします。
きみひろ池のネムノキで、ヒナ連れのコサメビタキが、突然
の賑やかな子どもたちの来訪に驚いています。

子どもたちはめいめいに、トノサマガエルを捕ったり、サワガ
ニを集めたり、元気いっぱいに飛び回ります。
ヤマカガシの出現に悲鳴をあげる女の子もいますが、めい
めいに持っている水槽や虫カゴには、次々と小動物が入って
いきます。

やすゆき公園のクヌギの樹液溜まりで、今年初めてのミヤマ
クワガタをとらえたり、コクワガタをとらえたり、オオスズメバチ
や大きなトビズムカデに悲鳴を上げたり・・・
めいめいに「里山」を満喫しています。

里山の生物に戯れたあとは、みんなで山案山子テラスで昼食
タイムです。
昼食を食べながら「人間と獣の、最も良い関係って、どんなの
か?」について、話しあってみます。

人間と獣は、決して一緒に暮らすことはできません。
獣は山に住み、人間は里に住むものです。
ですから、里に出てくる獣を撃ち殺すのは、正しいのです。
でも今は山も植林が多すぎるという「問題」があります。
林業も素晴らしい職業なのですから、植林が悪いというのでは
ありませんが、「植林しすぎる」のは良くないのです。

山は獣のもの、そして、里は人のもの・・・・
このようにきっちりと獣と人が「住み分ける」ことが、最も重要
なのです。
ジブリ映画「もののけ姫」のメッセージがまさにそれなのです。

昼食の後、「まがたま池」に植栽する水草を3種、抜き取りま
す。
まずはハンゲショウ。
水の陸の境界のジュクジュクした部分に生える草です。
ハンゲショウの生える環境には、たくさんの小動物が暮らし
ます。
水域環境のポテンシャルの高さは、この部分の豊かさに起
因しているとも言えます。

次はヒメコウホネ。
抽水植物です。
抽水植物を植えるだけで、トンボの種数は増えます。
マルタンヤンマやギンヤンマ等のヤンマ類は、抽水植物の
茎に産卵します。

最後にトチカガミ。
浮葉植物は水面を覆い、水温の上昇を防ぐとともに、クロイト
トンボ、キイトトンボ、ベニイトトンボ等のイトトンボ類の産卵環
境として最適です。

水草を植えることで、富栄養化を防ぎ、窒素過多になると増殖
する、アオミドロの増殖も防いでくれます。
しかし水草は、ものすごい増殖能力があり、環境が合致すると
一気に水面を覆い隠してしまいます。
トンボやカエル等、外から水に入る生き物は、水面の反射で水
を認識するものが多いので、水面全体は水草を覆われると水
を認識できないものも出てきます。
ですから定期的に水草を抜き取ってある程度の水面を作るこ
とも必要です。

でもここで問題なのは抜き取った水草です。
そのまま捨てれば単なる産業廃棄物です。
ですから細かく刻み、腐らせて堆肥をつくるのはどうでしょう?
みなさんが「まがたま池」の水で美味しい米を作るなら、米の肥
料にしてはどうでしょうか??

その後、天堤池に上がり、タヌキの便所を観察して、那賀寺を
めぐり、とんぼ池に戻ります。

14時をまわり、そろそろ帰りの電車の時間が迫ってきます。

忘れ物のないように荷物をめいめいにチェックし、引率の山中
先生を先頭に、めいめい帰路につきます。

きょうは丸一日思いっきり里山に浸りました。
彼等はこの夏休み、山中先生の前任の熊野川に行くそうです。

「今度は冬に来いよ! 紀北の森と、南紀の森が、最も違って
見えるのは冬やから!」

これを次回までのメッセージにします。

冬に彼等が孟子の雑木林に来たら、このメッセージの意味が
わかる筈です。
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<鳥類>
キジバト、ホトトギス、コゲラ、ツバメ、セグロセキレイ、サンショ
ウクイ、ヒヨドリ、コサメビタキ、キビタキ、サンコウチョウ、ヤブ
サメ、ウグイス、エナガ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ
ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス
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<両生爬虫類>
ニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル
ニホンアカガエル、トノサマガエル、ツチガエル、ヌマガエル
ウシガエル、ニホントカゲ、ニホンカナヘビ、ヤマカガシ
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<昆虫>
キイトトンボ、クロイトトンボ、モノサシトンボ、オオアオイトトンボ
ホソミオツネントンボ、ハグロトンボ、ヤマサナエ、コオニヤンマ
オニヤンマ、ヤブヤンマ、クロスジギンヤンマ、ギンヤンマ
オオヤマトンボ、ハラビロトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラ
トンボ、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ、ウスバキトンボ
チョウトンボ
オオカマキリ幼、ヤブキリ、ヒメギス、ハネナシコロギス、ナツノ
ツヅレサセ、カマドウマ、オンブバッタ幼、トゲヒシバッタ、ハネ
ナガヒシバッタ、ヒシバッタ、フキバッタの一種幼、ツマグロイナ
ゴモドキ、トゲナナフシ
ホソヘリカメムシ、ホソハリカメムシ、ルリクチブトカメムシ、モチ
ツツジカスミガメ、マツモムシ、アメンボ、ヒメアメンボ、ニイニイ
ゼミ、オオヨコバイ、シロオビアワフキ幼
クロヤマアリ、クマバチ、セイヨウミツバチ、コガタスズメバチ
オオスズメバチ、ヒメスズメバチ、キアシナガバチ、キオビベッ
コウ、ヒメベッコウバチ、ジガバチ、ルリジガバチ
ヤマトアブ、マガリケムシヒキ、オオイシアブ、ホソヒラタアブ、ホ
シアシナガヤセバエ
ヤマトシリアゲ
モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、キチョウ、モンキアゲハ
クロアゲハ、ナガサキアゲハ、ムラサキシジミ、ウラギンシジミ
ヤマトシジミ、ベニシジミ、イチモンジセセリ、コチャバネセセリ
コミスジ、ミドリヒョウモン、アカタテハ、ヒメウラナミジャノメ、ヒ
カゲチョウ、クロコノマチョウ、カノコガ、カラスヨトウ、ナカグロ
クチバ、カキバトモエ、ホタルガ
ナナホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、クロウリハム
シ、ウリハムシ、アオバアリガタハネカクシ、ヒメクロオトシブミ
キマワリ、コクワガタ、ヒラタクワガタ、ミヤマクワガタ、シロテン
ハナムグリ、コイチャコガネ、カナブン、マメコガネ、セマダラ
コガネ、ミズスマシ、オオミズスマシ、マメゲンゴロウ、ヒメガム

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