「四国遍路2018・初夏⑧ 〜あるお接待の思い出〜」

自分がかつて歩き遍路をしていた時を中心に、

四国のみなさまからたくさん【お接待】を頂きました。

徳島→高知を進み、愛媛・南予地区に入って、

左手の風景が太平洋から瀬戸内海に変わって

国道56号線を北上するところでも

お接待を頂いた時があります。

それはとても寒い日でした。せっせと歩き、

国道56号線を宇和島に向けて北上していました。

そこに一台の乗用車が止まり、助手席の窓が開き、

運転席にいたおにいさんが「お接待です。

寒いのにご苦労さまです。」と

あったかいペットボトルのお茶を私に手渡されると

颯爽と進行方向に去って行かれました。

その間15秒くらいでしょうか。

この国道56号線は交通量が多いので、

駐停車しづらい道路なんです。

その方はスキンヘッドでしたが、

怖い感じではなくお坊さんのようでしたが、

普通の服を来ておられました。

そのお接待を自然にさらっとされ、颯爽と去って行かれるって、

なかなか出来ない・行けない境地であります。

生き仏様とは、あのような御方なんだと、

今でも鮮明に覚えています。

あったかいお茶に込められた

おにいさんの御心に感涙しながら、

てくてく歩いていたことを、ここを通る度に思い出します。

今回の車遍路の際、しんどそうに歩いておられる

お遍路さんを二人見たのですが、

アクセル踏んで抜かして行きました。

かつて私が歩き遍路しててしんどい時、

地元の人とかが私に声をかけ、数回乗せて頂き、

とても助かりました。

自分が何回もして頂いたにも拘らず、

いざ自分が出来る立場になっても、

それが出来ないということに、

自分の至らなさを痛感して帰って来ました。

「急いでいるから」とか「引き返すのが面倒くさい」とか

「(お接待を)断られたらどうしよう」とか

「ヘンな人やったらどうしよう」とか、

そんな正当っぽいことを思いつつも、

やっぱり自分の良心は痛む訳です。

ですので次回車遍路をする時は、

更に時間のゆとりを持って、

困っているお遍路さんがいれば、

お声がけしたいと思っています。

人間は自分のことが一番良く観得ませんが、

こんな感じで、客観的に観得てくるのもまた

四国遍路の魅力だと感じています。

【写真】愛媛・南予地区の海の風景と、

かつてお接待で頂いたあったかいお茶(2012年2月28日)