無償の愛

日 時 2020年12月17日(木)11時〜12時30分
 昭和を代表する作家・山本周五郎の作品の中から「さぶ」の紹介が
ありました。
 彼は1903年山梨県に誕生(本名:清水三十六)、1916年小学校を
卒業し、貧困のため質屋:きねやに奉公、1926年文芸春秋に「須磨
寺付近」を掲載(出世作)、1943年「日本婦道記」が直木賞に選ばれ
るも辞退、1959年「樅の木は残った」の毎日出版文化賞を辞退、
1961年「青かべ物語」の文芸春秋読者賞を辞退、1967年死去。
 彼のペンネーム「山本周五郎」は、13才の時に奉公した質屋の
主人の名で、この経営者は店員全員に簿記と英語を習わせ、夜学にも通学を許すという人格者(精神的・物質的な庇護者)だったことによるのだとか。
 彼の特徴は、主人公は懸命に生きる無名の貧しい人々で、・反権力志向の作家、・賞を辞退する作家、・軍部からの報道班員要請を断った作家、そして「へそ曲がり」であった由です。
 「さぶ」のあらすじは、江戸下町で雨の中で泣いていたさぶの姿を見つけ、栄二がさぶを慰めるところから始まり、二人は表具屋・芳古堂で働いていましたが、無実の罪をきせられ人間不信におちいった栄二が、人足寄場で苦難と闘うのをさぶが支えるという友情を描いたものです。
 さぶは、回転が鈍く不器用だがひとつのことに一生懸命になるタイプで、栄二は男前で頭が良く器用な職人タイプという設定でした。
 彼の遺言は「貧困と病気と絶望に沈んでいる人たちのために、幸いと安息の恵まれるように」とのこと。