自由で強烈な自我

日 時 2020年7月9日(木)10時〜11時30分
 大阪の新興住宅として開発・発展した帝塚山(大阪南部)には
モダニズムの香り高い文学がありました。
 帝塚山に住み、ヒューマンな作品を残した一群の作家(帝塚山
派)の中から代表格の庄野潤三をご紹介していただきました。
 まず帝塚山派ですが、昭和の一時期、帝塚山を中心とする
作家達による文学活動が存在し、そこから数多くの文学者が輩出
され、香り高い上質の文学が誕生したことで、これを帝塚山派文学
と名付けられた由です。
 そして帝塚山派の作家とは、(1)住吉に居住した文学者、(2)帝塚山学院卒業の文学者、(3)帝塚山学院で教鞭をとった文学者・・・と定義できるとのこと。
 庄野潤三は、1921年(大正10年)に帝塚山で生まれ、32才で上京いたしました。
 賞も数々受賞しており、「プールサイド小景」で芥川賞、「静物」で新潮社文学賞、「夕べの雲」で読売文学賞、「絵合わせ」で野間文学賞・・・等々があります。
 また1978年(昭和53年)には57才で日本芸術院会員にもなっております。
 彼の作品の特徴は、主として家族を扱っていることで、たとえば「プールサイド小景」は、幸せそうに見える夫婦が内蔵する家庭崩壊を予感するもので、クビになった夫、生活不安にかられて徐々に狂気を帯びる妻、そして強烈なラストシーン・・・(「静物」では、壊れた家庭の幸福を再建する物語となっています。)