小説は伝統的な詩学が不在

日 時 2019年10月26日(土)13時30分〜15時30分
 群馬県高崎市生まれ(1947)の女流作家・金井美恵子の代表作
「文章教室」の解説を中心とした現代文学講座がありました。
 「文章教室」はフローベール(仏)の「ボヴァリー夫人」に蓮實重彦
(元東大総長)の「ボヴァリー夫人論」を通して影響を受けたもので
はとの見解を示されました。
 金井恵美子の特徴は・・・・・
 (1)現代詩から出発し、小説・エッセイへ。
 (2)姉(2才年上)が画家で、本の挿絵や装丁も手掛けている。
 (3)「文章教室」を含む目白4部作から風俗小説に傾注。
 (4)猫好きで、18年間も飼っていた。(「遊侠一匹・迷い猫あずかってます」執筆)
 (5)子供の頃からの映画ファン。(ジョン・フォードやマキノ雅弘など) ・・・・・等々です。
 さて「文章教室」の内容ですが、カルチャースクールで「文章」を書くことを学んでいる主婦(佐藤絵真)が主人公で、彼女の書く「手記」を含めて、新聞や雑誌文学作品の中に遍在している紋切型文章の見本のようなスタイルで書いた風俗小説です。(作者言)
 具体的には3つの恋愛(絵真とデザイナー・吉野、絵真の娘・桜子と大学助手・中野、作家志望の女と現役作家)で、「ボヴァリー夫人」のような身勝手さが軸になっています。
 小説には、抒情詩や叙事詩のような詩学が不在であること示すような作品でした。