「乳と卵」から「ウィステリアと三人の女たち」

日 時 平成30年11月17日(土)13時30分〜15時30分
 表題の小説は川上未映子の作品です。
 彼女は、シンガーソングライター・詩人・俳優・エッセイスト・
小説家・・・と多彩な顔を持っており、作品を通じてその世界を
探ろうとするセミナーでした。
 今回は小説の話しですので、その主な受賞歴を見てみますと
 「乳と卵」で芥川龍之介賞、「ヘヴン」で紫式部賞、「愛の夢とか」
で谷崎潤一郎賞、「あこがれ」で渡辺淳一賞等で、今年(2018年)
発表されたのが「ウィステリアと三人の女たち」という小説です。
 さて「乳と卵」ですが、物語の内容はわたし(夏子)が住んでいる東京に母娘(姉:巻子、娘:緑子)がやってきて、巻子が豊胸手術をしようとし、緑子は巻子と全然口をきかない。
 この手術のことと母娘が口をきかない謎を展開によって明らかにしていくというものです。
 文体の特徴は、大阪弁にときおり混じる効果的な漢語など、多彩な躍動感であるとのこと。
 (登場人物の名前からみて、樋口一葉の「たけくらべ」が念頭にある?)
 後半は「ウィステリアと三人の女たち」のお話しで、女性同士の恋愛感情を扱ったものである由。
 物語は夫が接待で外泊した夜、その主婦が向かいの壊れた空き家に入り、闇の中で以前住んでいた老女の生涯を想像するもので、自己の内部に降りて行き、物語を紡ぐことが自己治癒につながり、新しい自己の誕生を促すというものでした。