宙組東宝公演「黎明の風−侍ジェントルマン 白州次郎の挑戦−/Passion 愛の旅」

忙しかった年度末がおちつき、久しぶりの観劇です。
宙組公演「黎明の風−侍ジェントルマン 白州次郎の挑戦−/Passion 愛の旅」です。

今回は知り合いにとってもらった1階SS席前から三列目なのだ!

3列目はちと近すぎかな?と思いましたが、
全然大丈夫でした。
生徒さんの息遣いを感じましたし、
汗が飛ぶのも見えました。

タニ(大和悠河)さんとらんとむ(蘭寿とむ)の客席おりの時や
銀橋のシーンでは、
私以外の周辺のおじさんたちが固まっているのが
面白かったです。

目があったら、面白い顔をしようと
思っていたのですが、さすがにできませんでした。
次回は鼻めがねでも持っていきたいと思います。

さて、公演評です。

「黎明の風」
戦前からサンフランシスコ講和条約までの
GHQをして「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめた白洲次郎の物語です。

戦後混乱期の様子が面白かったです。
南朝直系の熊沢天皇と名乗る人物がいたのですね。
初めて知りました。
完全に歴史から消されていますもの。
映画「YASUKUNI」が話題になっていますが、
この作品も政治的に微妙です。
白洲次郎は基本的には吉田茂を中心とした
反戦派のヨハンセングループなので、
東条英機を徹底的に批判しています。
憲法についても改憲派だし・・・
しかし、次郎は第九条を否定している訳ではなく、
GHQに押し付けられたというプロセスを問題にしているのですが、
観る人が観れば、突っ込みどころが満載です。
一方で、裕仁天皇については肯定的です。
でも、次郎はプリンシプルが一貫していることは確かですね。

それにしてもこの作品はある意味、
宝塚だからこそ公演できたのかも?

私は政治的なところが気になって感情移入が
できませんでしたが、結構、皆さん泣いていました。

さて、宝塚の観方のひとつに
演じている生徒さんの歴史と
役柄を重ね合わせて観るということがあります。
この公演で退団する美郷組長と音乃いづみさんの役が
まさしく、このパターンでした。
歌姫音乃いづみさんの場合、
役柄こそありませんでしたが、
「東京ブギウギ」など戦後の流行曲をソロで歌います。
退団する生徒にハレの舞台を用意するのも宝塚らしいところ。
美郷組長の場合も定年間近の真面目な官僚近藤の役です。
Top Of Topsの轟悠演じる白洲次郎が
定年間近な近藤(退団間近な美郷組長)に
君のような存在が必要なんだと
たぶん3分ぐらい感謝の気持ちを伝えます。
これってまさしく組長の宝塚人生そのものです。
轟さんは劇団の理事です。
理事と組長の立場では恥ずかしくて言えないことを
白洲次郎と近藤という虚構を借り、舞台上で言われると、
背景を知っている者としては泣けてきます。

「Passion」
今回は主演男役二人なので、
賛否両論ありそうです(あるのですが・・・)。
タニちゃん中心の宙組らしい場もあり、
轟悠(いしさん)さん中心の幻想的な場もあり、
客席おりもあり、良かったですよ。

個人的にはいしさんとタニさんの
デュエットダンスの時に
タニさんが娘役をしたシーンが
興味深かったです。

普段は主演男役のタニさんが
娘役を演じるという不思議。
そもそも普段女性が男役を演じているのが不思議なのに
その男役がさらに娘役を演じる時に感じる色気って何なんでしょうね。
冷静に考えれば、女性が女性を演じているのだから、
自然なはずなんですが・・・

宝塚の場合、公演での役を演じる前に
清く、正しく、美しいジェンヌ(生徒)を演じ、
そして、男役、あるいは娘役を演じてから、
それぞれの公演での役を演じるという構造になっています。
舞台が終わっても、宝塚の男役を演じるというのは
消えないので、男役が娘役を演じたときに
余計に怪しげな色気を感じてしまうのかも知れません。

今回は前から3列目だったので、
舞台はすごい運動量であり、
生徒個々の運動能力が素晴らしいことを再認識しました。
歌もクチパクではないですし、
額は汗だらけですもの。

さて、明日は日本青年館の星組公演「赤と黒」の観劇です(%ニコ男%)