■ 「発達障害の二次障害を回避するために」講演会 ■

この度「平成26年度歳末助けあい愛の持ち寄り運動」公募配分の助成金を頂き、講演会『発達障害の二次障害を回避するために』を平成27年3月12日(木)14時30分より宝塚市西公民館にて開催いたしました。

講師の定本ゆきこ先生は精神科医で、京都少年鑑別所で社会的に問題を起こしてしまい収監されてきた色々な少年少女と接してこられています。「どうしてこの子は悪いことをしたのか」をIQテストや一日の24時間の行動など色んな方面から見ながら面接お話しをして診断し、そして性癖も聞かれます。見てきた子供達のその多くは、どの子達も成育歴で傷ついている、周りに理解されなく育った苦労した子たちの集まりだとおっしゃいます。
以下、定本先生の講演内容を私なりにまとめてみました。
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先生の「二次障害は一日にして成らず」という言葉から分かりますように成育歴からしっかりと聞き出すことで二次障害を理解できる事が沢山有ります。
■小さな失敗体験の積み重ね(一回のショックではなく何度も傷つく経験をした)
■変更されずに繰り返される否定的なメッセージ(毎日親に叱られる事によるストレスやイライラ感)
■全ては流れと環境の中で出来上がっていく(安定した生活の循環により健やかに成長できる)
発達障害の生きにくさの経験から火遊びに走ったADHD例・友達が出来ないから苛められていると思い包丁を持ってコンビニ強盗未遂の例などもあります。
どの子も人間関係はいつ頃から苦労したかと聞くと、幼いころからという子達ばかりです。人は人によって傷つき、そして人は人によって癒されます。まずは理解をしてあげることなのです。人と同じように普通にする事が発達障害にはどれだけ大変な事かを理解し「がんばったね、」のねぎらいや「これ以上しんどかったら辞めてもいいんだよ」という声かけがとても重要なのです。
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「発達障害と二次障害」とは、誰にとっても成長、発達していく過程があり、時期ごとライフサイクルごとの課題を乗り越えんとするために、何かを得て、つまづいて、傷ついてを繰り返しますがそれは身近な人との関係ややりとりに助けられながら力をつける事が大切になります。
ライフサイクルごとの発達課題として
■乳児期・・基本的信頼vs不信 
甘える赤ちゃんを受けとめる母の存在は父親には分からない絶対の愛の二者関係です。私は愛されて生まれてきた、生きていていいんだという基本的信頼をつくりましょう。
■幼児期・・自律性vs恥、疑惑
否定的な言葉ばかりでは、恥をかいて自信を無くしてしまいます、頑張ったねという肯定的な声かけで成功体験を増やしてあげましょう。
■学童期・・積極性vs罪悪感
 生産性vs劣等感
課題に取り組む事により積極性が生まれます。「まだ出来ない」「またやった」と叱られることが罪悪感や劣等感を生みネガティブになってしまうのを避けましょう、それが絶望感にならないように、ここでも成功体験を増やしておくと自己愛が守れるようになります。これが響いて影響するのが思春期です「自分て何なんだ?何の取り柄がある?自分は何者なんだ?」と自分自身を見つめます。悩んだ時には支援者は決してはぐらかしてはいけません、「不得意もあるけど、得意なこともあるね、頑張っていこうね」と応援してください。
■青年期・・同一性vs同一性拡散
親でも先生でも大事な人に誉められることにより、私は私である私は私でいい、昨日も今日も誰に対しても自分は同じ人間だと意識し自信ができます。反対の拡散とは、私って何なんだ、何も誉められないし社会には自分の居場所が無いと悩んでしまいます。反発や自己主張もしっかりと受け止めましょう
■成人期・・親密さvs孤独
 生殖性vs停滞
自分のことはおいておく時期でもあります。逆に自分探しをはじめてもいいのです。就職が出来たとしても、仕事を続けるという事が大変です。それは30代後半まで続いたりもします。
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発達障害の特性から二次障害へとそのまま直結はしません「環境との間で見られる悪循環と良循環」で望ましくない循環と望ましい循環で変わってきます。二次障害を避けるためには良循環の安定した生活が大切です。
■負のループ(悪循環)
障害の特性から出る適応的でない発言→周囲の否定的な評価や疎外感→低い自己像や周りへの不信や被害感→抑うつ的、無気力、意欲低下→課題に前向きになれない、どうせ自分なんかという自暴自棄
子供の場合は虐待のようなものです、この人はダメな人と見られいつも生きにくいと心が癒されません。特性を違う視点から見てもらえず悲観的になりやがて病気になります。楽天的な将来が見えなくなります。
■正のループ(良循環)
障害特性があっても適応的な行動へ、また得意なことの発見→周囲の肯定的な評価や好意的な態度で居場所の保障→良好な自己評価と自己尊重感・周りへの信頼と受容されている感覚→前向きで意欲的な構え
人は一日では変わりませんが正のグループの良循環に流れを変えると3か月で変わったりします。適切な課題設定を支援者も見立ててあげましょう、適材適所と言うように、とても出来ないような仕事は与えず、出来る仕事で誉めてあげることです。向いている仕事を勧めるためにも見立ては必要です。
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このように「負のループを循環する中から二次障害が」うまれます。
子どもにとっての不適切な養育からくる、癒されず救われない悲観的な考えから、思春期・青年期にうつや不安パニック等の様々な症状が出現し始めます。大部分はうつですが、認知傾向が歪んできて被害的・他罰的・自罰的にもなります。つまり、上手くいかないのは相手が悪いのだと思い行動パターンまで歪んできます、それは避難的・攻撃的・演技的・操作的となり、攻撃される前に自分が先に攻撃したり、また演技かのように特有の症状を出すこともあります。
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「良循環に変えていくこと」を心がけましょう。
自分のサイクルを知り、今どうして悪循環になっているのかを気づくように、そしてその中の一つでもとりあえず変えてみる事を心がけて悪循環に陥らないようにしましょう。(例えば・・午前中に起きる、一人にならない、自分を駄目だと思わない、イライラしたらその場を離れる、悪いことを思い出しそうになったら良い思い出の写真を見る等)ものごとは循環で動きます。望ましい形の循環に変換することで、人間関係や自分と向き合う事で色んなことが総合的に良い方向へ変わっていきます。
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発達障害当事者は「生きやすくなるためのコツ」をつかんでおきましょう。
■自分の苦手なところも得意なところも知り、先ず理解してくれる人を探しましょう。
■理解してくれる人に自分の苦手なところを控えめに、でも明確に伝えましょう。
理解してくれる人と話す事で自然と話せる話しやすい人ができます、これを習得しますとやがては話しにくかった人とも話せるようになります。自分が居心地のいい人、話しやすい人の傍に行きましょう、すると自分も穏やかになるのです。
■自分の中の認知の偏り、歪みに気づくこと、そして誰かに助けてもらいながら、少しずつ修正していけるように努力しましょう。
■一人で抱え込まないで相談できる相手をみつけましょう。
■人は一人では生きていけないけれども、親に期待し過ぎず諦めが肝心。
どうしても理解してくれない親でしたら、期待しないで諦めて次に理解してくれる人を探しましょう、否定されるために生まれてきた訳ではないのだから、血縁者にこだわらず、あなたの傍に優しい人はいませんか?親の理解が難しいのなら、第三者のサポートを求めその人に感謝を忘れず助けてもらいましょう。「ありがとう」の気持ちを大切に。
■昔の傷ついた自分を、今の自分が慰めて、お前が悪いのではなかったと認めてあげる。
楽しみを見つけ、同じ趣味の人と知り合い、あっさりしたお付き合いでいいのです。良い出会いを思い出し、良くない出会いには振り回されないようにしましょう。
発達障害は薬で治療して治す病気ではないので、自分自身を受け入れて上手く付き合っていきましょう。それは健常者でも同じ努力しています。苦手な事は、直す直さないの話ではありません、苦手なものだと認知して回避しながら、肯定的な支援のもと感謝の気持ちを忘れずに良循環で過ごしていきましょう。
支援者は当事者が苦手なところを認めない時に責めてはいけません、防衛しているだけなので、出来るところを誉めてあげる事で当事者はその後苦手なところも認めれるようになります。
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「違法行為への対処、回避」
追い詰められたり切迫した気分の時に生きづらさを感じ自分を守ろうとします。生きづらさを認め、無理をしないようにし今後の生活の送り方を支援者と共に考えましょう。ストレスの強い状況からは早めに回避し、抑うつや不安などの症状は早めに治療しましょう。
違法行為は事の重大性を認識するために余り大目に見ないで厳正に対応しましょう。
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定本ゆきこ先生の講演会を終えて・・・私の感想です。
発達障害と二次障害の因果関係がより理解できました。障害名が付いたとしても付かなくとも一人ひとりが違う特性を持ち同じ人間はいないのです。支援者はそれを理解し個性と見ることでより良い支援がしやすくなります。気持ちを理解し寄り添うことでとても健やかに成長していきます。大人になってからでも遅くはありません。理解者の支援者にとっての落とし穴は理解するあまりに不適切な言動に対し過ちを訂正してあげない事です。社会に適応できないふさわしくない行動や発言は、その直後に間違っているよという事も教えていきましょう。怒鳴らずくどくど言わず要点を短く分かりやすく伝えましょう。正しいことも教えていくことで正のループに入り、生きづらさ疎外感や困り感が減りますね。
また発達障害の当事者で今がどうしても辛いしんどいと言う人は他に居場所を見つけましょう。自分を受け入れてくれる場所をさがしましょう。負のループに入っているのなら正のループを探しましょう。世の中は相手が変わってくれる訳ではありません、あなたの障害特性を社会・世の中の全ての人が受け入れてくれる訳ではありません。特性はユニークで愛されるような自分の魅力として受け入れてもらえるように心がけ、決して相手を脅すような武器にしてはいけません。自分も変わっていきたいと自分のことも見つめなおしましょう。
また幼少期を振り返って親に理解されていなかったと思う人は親を憎んではいけません、あなたが今生きているのは育ててくれた親がいたからです。今からでも感謝の気持ちとありがとうは忘れずに生きていきましょう。それも正のループへ繋がるはずです。
最後に
人間は感情を持った生き物です、喜怒哀楽というように笑ったり怒ったり悲しんだり豊かな感情を持っています。発達障害でも精神障害でも健常者でもみな同じです。なぜ一緒に笑え楽しい時間を過ごせるのか、なぜ相手は怒ったのか、悲しんだのかを考えて相手の気持ちも理解する努力も必要です。自分のことだけを大事にするのでなく周りの全ての人に感謝の気持ちを忘れずに生きていきたいと思います。

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