AAF的東北アートツーリズム紀行(5)〜地獄谷・旅館大沼・田中邦衛〜

3人で齋藤さんの車に乗り込み、まず最初に向かったのは、「ビッグスター鳴子味庵 (なごみあん)」。

見た目はどう見てもカラオケボックスで、実際中身も一部は現役のカラオケボックスなのだが、一部が座敷に改装されてランチスペースになっている。

で、このシチュエーションとは裏腹に、出てくるランチは、野菜ソムリエによるこだわりの地産地消ランチ。とっても美味しくてヘルシーで、おまけに地域にも貢献している。カラオケボックスと野菜ソムリエという組み合わせは一見ミスマッチだが、カラオケボックスの常連客がこの店をきっかけに食や農への関心をもつようになっっていったとしたら、実にすばらしい組み合わせと言えるかもしれない。

ちなみに、「なごみ」という名は私の娘の名でもある。こんなところで「鳴子」とうちの家族に接点があったとは…(余談)
 

腹ごしらえをしたあと、コンビニで卵を1パック買ってから向かったのは、「鬼首・吹上 地獄谷」と呼ばれる場所。

地獄谷の駐車場に向かう上り坂の入口に着くと、なんと、その先の道は一面雪に覆われていた。今まで車で通ってきた道は、除雪されていたから積雪がなかったのね。さすがは東北。もう3月なかばだというのに、まだまだ雪深い。

下手をすればひざまでハマる雪道を歩くことになろうとは想像だにせずみんなをここに連れてきてしまった齋藤氏はオロオロしていたが、もとよりボーイスカウトの隊長もやってる野生児の私は、「ここまで来たんやから行こう!」と構わずみんなを先導して突進。

これまた雪に埋もれた木道の階段を下りると、いよいよ「地獄谷」に到着!!

「地獄谷」とは、峡谷のあちこちからもうもうと湯気があがり、岩の隙間からボコボコと熱湯が吹き出す間欠泉。

間欠泉の動画1
間欠泉の動画2

地球の底から湧き上がってきたエネルギーが、この場所から地上に吹き出している。

まさしく、パワースポット。

地球、生きてる。すごいなぁ。地球の生命力。

その、地球のエネルギーをちょっとだけお借りして、さっきコンビニで買った卵をゆでさせてもらった。正真正銘の温泉卵。ゆであがった卵は、塩なんてつけなくても、ちょうどよい味加減。めっちゃうまい!!
 

地獄谷をあとにして、鳴子温泉の「早稲田桟敷湯」でひと風呂あびる。

地球の底から湧き出したエネルギーに全身を浸ける快楽。大げさに聞こえるかもしれないが、温泉に入るということは、地球という生命体との肉体的な結合・合体行為なのかもしれないと、感じた。

日も暮れた午後6時ごろ、ようやく本日の終着点「旅館大沼」に到着。
早速、作務衣を着こなした湯守の大沼さんが出迎えてくださった。

湯治場では、旅館の主人を「湯守(ゆもり)」と呼ぶそうだ。単なる観光宿ではなく、客人の心身を癒す湯治の湯を、妥協なく、いつまでも提供し続けるという責任を肩に背負った、すばらしい呼び名だと思う。

部屋に荷物を置き、旅館の送迎用ワゴンに乗り込んで、早速、山道を少し登った山荘風の離れにある、旅館大沼ご自慢の露天風呂をいただいた。

満天の星空のもと、里山に抱かれた露天風呂で、裸になって大地と融合する。
至福のひと時。

露天風呂を出て、ふたたびワゴンで宿に戻ると、細やかな心遣いと工夫が感じられる夕食が用意されていた。大場陽子さんが作曲した音楽を聞かせて醸されたといううわさの地酒「天音」も、特別にいただくことができた。(大場さんについては明日の記事で詳説します)
 

ところで。
なんとなんと、偶然にもこの日、この旅館大沼に、あの田中邦衛さんが宿泊されていたんです!! わずかな時間差で同じ風呂に浸かり、同じ建物に泊まっておられると思っただけで、なんだかワクワク。大沼さんも、VIPの来館とあって少しお忙しそう。

実は、今日の昼間、仙台で『田中邦衛氏と語る午後の茶話会』という講演会があり、そのあとこちらへ来られたらしい。

ちなみに、その講演会の内容はというと…
「地方でさかんに映画が撮影される昨今ですが、映画は地域で生きる私たちに、どんな宝物をもたらすのでしょうか?
日本の映画界を代表する俳優田中邦衛氏に映画をめぐる楽しいお話をうかがいます。
お相手は地域で映画作りに造詣の深い荒井幸博さん。
名優のトークで心豊かな午後のひとときを。」
イベント案内ホームページより引用

〜映画は地域で生きる私たちに、どんな宝物をもたらすのでしょうか?〜

私も、齋藤さんも、AAFでまさにそのテーマに取り組んでいるわけで。
偶然というには、できすぎたシチュエーション。
これはもう、ご本人と一晩語り明かすしかない!…と思ったのですが、マネージャーさんのガードが固く、さすがにそれは実現叶わず。

それでも、大の邦衛ファンというS氏は果敢に握手を挑んでました♪

…さてさて。
邦衛さんが部屋に入られてようやく一段落した湯守・大沼さんに呼ばれて、大沼さんを含む4人で応接室へ。そこで大沼さんがすかさず出してきたのは、地酒「雪渡り」。

 「鳴子の米と水と人の手で、本当の地酒をつくりたい」という地元の方の念願が実現してできた曰くつきの一品らしい。
その人の思いは、どこか「權座」と重なる。

酒も入ってますます口のすべりもよくなり、ここから、怒涛の大沼ワールドに突入!?

(次の記事へ続く)