追憶の満州旅行〜番外編1:中国の交通事情〜

ひと昔前は自転車が中心だった中国も、いまやすっかり車社会。

日本と大きく違うのは、中国では、「歩行者優先」ではなく「自動車優先」である、ということ。そして、日本ほど細かい道路交通ルールが定まっていない(であろう)ということ。

たとえば、日本では交差点に右折進入してきた車は、横断歩道を渡っている歩行者がいれば停まって待ちますが、ここでは、車は待ってくれません。歩行者は、車をよけながら道路を渡らねばならず、なかなかスリリングです。

また、車同士でも、どちらかが優先で譲り合うということはなく、信号のない交差点ともなると、カーアクション映画さながらに、あちこちから次々に迫ってくる車を巧みなハンドルワークで交わしながら進みます。

高速道路の路肩を農耕車や馬車がのたのた走っていたり、対向車線を逆走して疾走してくる車さえありました。

クラクションも、市街地では朝から晩まで絶え間なくどこかから聞こえてきます。

日本人から見ると、一見、1分に1回ぐらい交通事故がおきても不思議ではないような、無法地帯のとんでもない道路事情なのですが、しかし、4日間あちこち長距離を走り回って、実際に事故らしい事故を見かけたのは1回だけ。

よくよく観察していると、なぜ事故が起きないか、少しわかってきました。

まず、クラクションの役割ですが、中国では、追い越そうとする相手の車、対向車、飛び出そうとしている自転車などに「自分の存在を知らせる」意味で、きわめて頻繁にクラクションを鳴らします。単に自分が車線変更するだけの場合でも、ウインカーの代わりにクラクションで周囲の車に存在を知らせます。

基本的には、遠慮してたらいつまでも先に進めないので、「我先に」という感じなのですが、かといって、相手を無視してわが道を行けば途端に事故にあって結局自分が損をすることがよくわかっているわけです。

だから、しっかりと自分の存在を相手に示し、自分がこれからどうしたいかを示し、絶妙なコミュニケーションを図りながら、高速道路にロバが歩いていようが、逆走してくる車がいようが、あらゆる事態を「想定内」のこととして念頭に入れた上で運転しておられるのです。

ガッチリと細かくルールを決め、ルールを守らない人を厳しく取り締まることで、安全を確保している日本の交通事情。しかし、その結果、ドライバーの「想定範囲」はきわめて狭くなり、対向車がこちらのレーンに飛び込んで来るような「想定外」の事態には、なかなか冷静に対応できない状況を作り出してしまっているのかもしれません。

一方、中国では、「なんでもあり」なことを念頭に置いた上で、常にクラクションで危険を未然に回避したり、突発的な事態にも冷静に対応できる心構えができているように見受けられました。

果たしてどちらがいいのか…。
(※上記は筆者の主観的な推論です)

ちなみに、余談ですが、中国の道路はほとんどがコンクリート舗装のようです。