諦めない第三者が傍らにいると思っていただける活動を!

古材文化の会は25期目に入り、京都市文化財マネージャー育成講座(建造物)も第11期を迎えます。ますます多方面からの期待は大きくなっているようです。
 これは大切な建物だ、次世代へ残っていくべきものと誰もが思うような歴史的価値ある建築物であっても、それが個人の所有ということで、残らない、一瞬にして解体されることがままあります。世界の人々が注目している京都の街ですら、です。
 長年、主婦をやっていますと、マスコミやネットの情報では、日々の暮らしの中の親身な事実が伝わらないこともあることがわかってきました。阪神大震災の復興を眺めながら、住まい手目線で「住」をテーマにして活動していこうと決めたのも、今から振り返れば、一般市民には理不尽とも思える、街のランドマークと思っていた洋館がマンションと化してしまった事もきっかけの一つです。

古いとされる建物の魅力や存在感に、かけがえのなさを感じます。それは、合理性や経済性では語れない「造り手の心」や「宿るもの」が垣間見えるからです。
 建物は人間と違い、人の心が繋がれば何世代も繋いでいけます。そこで自分に「何ができる?」と自問の日々ですが、ある年「京都を彩る建物と庭園」所有者さんへのアンケート調査で廻っていた時に、「あなたのような同じ目線で相談できる人と話したかった。」と言われたことがあります。何回かお会いする中、一緒に片付けをし、今は無人の家に残されていた、要らないけれど、捨てるに捨てられない品々、誰かにとっては価値ある物を会員さんのお世話もあり、次の方へ託されました。その小さな安心から幸せなお屋敷の継承に立ち会うこともできました。

私一人では何もできません。ただ頷き、ウロウロと所有者さんと一緒に心配するだけですが、古材文化の会の会員だからこそ、会に相談ができて、動けました。同じ立場で、一緒に悩み、願うこと、諦めない第3者が傍らにいると思ってもらえることが最初の一歩かと思います。会の「見守るネット」はそのような取り組みです。
 住宅は建物と違い、「住」という字が示す通り、人が主です。人が街を造ります。その小さな一歩になにか貢献したいと、この歳になってもまだまだ道半ばです。
 あらためまして、今年もよろしくお願いいたします。

一般社団法人 住宅遺産トラスト関西事務局/
古材文化の会 見守るネット副部会長
原田 純子

※「古材文化」143号(2019年1月1日発行)より転載