人々の無事を守る政治 内山節(哲学者)より

政治の目的は、国を守ることでも
日本の国内総生産(GDP)を
増やすことでもないのである

国の政治では国民の無事を守ること
地方や地域の政治ではそこに暮らす
人々の無事を守ること
それが目的でなければならない

国の防衛やGDPに増加は、その結果でしかない

なぜこのような言い方をするのかといえば
国の防衛や経済発展は、しばしば私たちの
生きる世界の無事と一致しないからである

たとえば第二次世界大戦をみても
国を守るための戦争が戦場や空襲による
多くの死者を出し、国民の無事を破壊してしまった

さらに今では多くの人たちが気づいているように
経済成長だけを目的とした社会は
格差社会やつながりのない
幸せ感の薄い社会を作り出してしまった

国家の防衛や経済成長は目的ではないのである
目的は人々が無事に働き、無事に暮らす社会を
つくりつづけることの方にある

そのことを見誤ると、人間が国家や経済の
道具として使われるという転倒が起こってしまう

そしてそれは、私たちを偏狭なナショナリズムと
とげとげしい国家間対立のなかに
引きずり込んでいきかねない

実際、偉大な米国の復活とか
強大な中国の建設などというスローガンが叫ばれ
日本もまたその一角に食い込もうとする対立の構図の中に
いま世界は向かいつつあるかのようである

みんなが無事に生きていける社会
政治は為政者のゲームではないのである

<スミレが咲きました>